俺の想いを言っとくぞ。
で、弥太郎さんが思い掛けない事を言い出しましたのよ。レイ・ファン・カルロスのリビングでソファーに横に成った珠樹さんの傍の床に寝そべって聴きましたの。
「 8年前だったな。コンツェルンの理事会で跡目が決まったからと畠山に戻るのを言われたのさ。覚悟はしていたが、敗戦の混乱を終結するのが先だったので性も根も尽き果てての宣言には居た堪れなかったんだ。
偶然此れが、柳橋を訪れたんだ。一瞬女には見えなかったんだ。孫か娘として傍に居て呉れるのならと、軽いも何もペット感覚で高輪に引き取ったのさ。
あの時の想いを正直に言ってるのさ。」
珠樹さんがあくびを噛み殺して呟いたのよ。
妊娠は経験が無いけど、あくびが酸素不足の結果の心配に走ってましたのよ。オデコを併せたら笑って呉れたんですのよ。
「 お熱は無いでしょう。朝から動きっ放無しでしたから疲れたのよ。此れで話しても好いかしら。」
で、呟く様に話し始めたのよ。
「 此れだけは知っといて貰いたいのよ。
娘は父親が最初の恋人って言うらしいのね。父には違う思いしか持って無かったのよ。
愛だとか好きなんてよりも、尊敬し無くてはって重荷が被さって居たのよ。ご両親をご存じ無いマリーさんだから判るでしょうけど、父は同じ世界の人では無かったのね。母の影響が強過ぎたのかも知れないけど、此の人に会った時お父さんの影を重ねて見たのよ。
今はハッキリ言えるけど、歳の差なんて物では無かったのよ。」
「 判る事にしときましょう。好いのよ、今のマリーは養育院を離れた時の冷静さを取り戻してるんですから。判るのよ。珠樹の妊娠がハーバードの冷静な黒人を必要としてるのがね。
そうなのよ。15でハーバードスクールの予備校とされてた、ボストンハイスクールに入れたのよ。
もう一本道が約束されてたから、其れまで被って居た幼さのベールを脱ぎ捨てたのよ。
計算づくの冷静で居なければってね。ですからお二人が、父と娘でスタートしたのは判るのよ。」
「 其の通りさ。2年前にこいつに愛を告白されたのさ。トレヴィの泉でファーストキスから始まった男と女に飛び込んだんだ。高輪の6年で娘の珠樹は消えて居たのさ。其れから生き返った2年だったのが突然娘が割り込んで来るのに気が着いたんだ。
もう妊娠は無いと決めて居たのに、
突然父親が復活したんだ。拙いも何もジッとコイツの寝顔を見詰めて居て、商事時代の人間関係を思い出したのさ。
ハッキリ言うと対面した商売相手はその場限りの付き合いなんだ。好きだとか感情を挟んだら何もかもがオシャカに成っちゃうのさ。
其の時の拗れを解くのには、俺よりも相手よりも冷静に計算できる人間が間に居て、何とか取引が成立するのさ。其れを思い出したので君に来て貰ったんだ。」
「 嬉しいと言うよりも光栄と感じた事にしときましょう。
良く判ったわ。奥様の振り袖姿を見てお嬢様かと思ったのよ。実は奥様だったのね。
そうなのね。貴男は旦那様だけど
奥様にとってはズート恋人で居て欲しいのね。母親の気持ちは判らないけど、冷静な母親が居れば安心して恋人を続けられるでしょう。
そうよ、珠樹さんにはマリーはお舅さんに成ったり、時には冷静な仲介者で居れば好いんでしょう。まだ何ヶ月か先なんでしょうから、其れまではオーストラリアを往ったり来たりしている話し相手で居れば好いのね。ご主人は別よ。クダラナイ自慢話を聞き流す役目を勤めれば好いのでしょう。
ハーバードの2期生までは偽りの特待生を作るのに集中したのよ。其れからの2年は半分作った愚痴として聞いて貰うわ。
好いのよ、飲み仲間は知らないけど並んだレベルのお相手としてなら、愚痴は会話のエッセンスに成るんですもの。其れで行ける処まで行きましょう。」
に成ったのよ。
岩崎コンツェルン何するものですかに、ハーバードを下に見る癖が有る弥太郎さんがお似合いかとも思いましたのよ。
青年は其のままにしといて、何ヶ月か先の父親を認めさせれば好いんでしょう。久しぶりに腕が鳴るのを覚えたのよ。