「 娘たちが此処を手に入れたのと同じ設定で譲りましょう。登録は10人の協同所有に成って居ますから、書類上は娘たちと貴男の契約に成りますのね。此処を契約したのと同じ様にマリーは立会人として此れからの契約の実行をさせて貰いますのよ。譲渡の契約が完了すれば、娘たちは一切日本から離れますのよ。其れを、功如きにとやかくさせないのが条件なんです。お判りでしょう。」

   「 そうか、奴を日本に釘付けにすれば好いのだな。まさか殺すのも出来ないだろうし、此れはかなりの難題に成るな。」

     笑っちゃいましたのよ。


   「 まだ功の本性が見抜けないのね。女が居ないと夜も昼も過ごせないのよ。今は楠さん任せですけど、先が知れてるベテランが居るでしょう。畠山のお殿様に聞いたんですけど、功君とどっちもどっちの強者同志だって聞いてますのよ。其の辺をしっかり掴んで置けば―――」

   「 そうか、柳橋の女将を使えって言うのだな。喜寿に近いとは聞いてるが、余丁が食い付くかな。」

   「 もう、とっくに食べちゃった見たいよ。女も男も死ぬまで其の気は抜けない見たいなのね。貴男だって覚えが有るでしょう。

           ほら、奥様頷いて居らっしゃるでしょう。三人のお嬢様を送り出したって聞いてますのに、どう見てもアラサーなんですもの。

     貴男が頑張れば、此の根津はお孫さん方の遊び場に成ったとしても、お二人の隠居所には成らないでしょう。」

      其うなのよ。奥様がリーダーの腰に手を回して、それと無く抓ってるのが感じられたんですもの。

 

   其の奥方の抜け目が無い事ったら、

   「 云っときますけど、此処が手に入るのでしたらもう一花咲かせてもとは思ってますのよ。表通りの電信柱には文京区って出てましたのよ。文京区で此れだけの土地が手に入るのでしたら、娘たちも出戻りするかも知れませんでしょう。舅には成りたく無くても、まだ孫のオシメを取り換えるのはご免ですのよ。」

          少しは気が引けるのでしょうね。幾ら若作りして居ても、女のサガは鏡を見る回数にも表れるのですのよ。でも男を此の先功がクタバル迄

頑張って貰うのには、奥様頼りに成るのですのよ。

      もうチョット、不動産屋マリーのクダリを聴いて下さいな。


   「 庭師が入ってますでしょう。芝神明の工務店がお庭も外構も引き受けてますのよ。今までは岩崎弥太郎さんのご縁で手を入れてましたが、此れも永

代の供養―――――ご免なさい。其処まで日本語に堪能では無いのですのよ。つまり―――」

   「 此う言う事でしょう。女同士が話は早いのね。

余丁さんを競馬に首まで漬けちゃえば好いのでしょう。

          余丁功ってドンナ男か主人に聞いただけですが、お金と女には目が無いって聞いてますのよ。お金の出どこは競馬なんでしょう。其処は主人

に任せますのよ。此の人の強かさは並みの神経じゃ無いんですのよ。お仕事の図太さって言ったら呆れる程なんですのよ。

      切った張ったなんてナマヌルイ事は遣らないんですのよ。青森会も要らないと成ったら切り崩した手口なんか呆れる程でしたのよ。あら、お仕事の間口を広げてドンドン深みに誘い込んだのでしたのよ。一人二人と姿を消して、気が着いたら青森会は無く成って居たんですもの。

    又、遣る気に成って居ますから、此処は私たちのお城に作れるのでしたら、赤ちゃんも夢では無いと思いますのよ。」


     ねっ、普通でしたら好いお歳でお腹が大きく成るのはお控えに成る筈なんですのよ。其れを仰るのは女の挑戦なんですのね。

        
        幾ら高見から攻め落とそうとしても、

現ナマを見なければ動きませんって。

     其んなのはとっくに計画の中に入ってたんですもの。

   「 お判りかしら。此れはマリーのアメリカンバンクのカードよ。丸の内の1丁目に東京本店が有りますから、何でしたら此れから行って現在高の証明を貰っても好いのですのよ。バルセロナでユダヤバンクの半分はマリーのアメリカンバンクに移して置きましたのよ。功のマネーロンダリンの10倍では利かない額に成りますのよ。

          功を競馬に首まで漬け込めるのでしたら、30年いーえ50年契約を結すんでも好いと思って居ますのよ。日本に釘付けに出来るのでしたらね。

     何しろお金には超ド級の貪欲な男ですから、

一瞬の油断も許され無い相手なんですのよ。」


     此のお二方には初お目見えでしたのよ。でも女のカンでは奥方の貪欲なのは功と好い勝負と感じたのですもの。後はリーダーの腕力と申しますか、殺しても知らん顔で騙せ抜けるかに拠りますのよ。 

     男の値打ちはウソと騙しを綺麗に仕上げられるかに掛かって居るのですもの。

           手始めに此の奥方を此処、根津の閨で成仏させられるかが見ものだと思いましたのよ。