「 功と泊まり掛けで神馬峠の温泉宿に行ったのは聞いてるでしょう。」
「 そうなのよ。貴女には悪いけど、自慢タラタラで聴かされたのよ。岩崎のご老人が囲ってた芸者が誘って来たとね。」
「 そうなのよ。一生の不覚として償える問題では無かったのね。彼は笑って居るけど、心をズタズタにして仕舞ったのね。
真っ直ぐ私だけを見詰めてる男の心を裏切ったのですもの。一瞬の迷いで浮気したのとは違うのね。
何と謝っても許される問題では無いのね。」
「 其れってマリーにも言える事なのよ。生きてれば間違いが追い掛けて来るのね。平坦な舗装道路を走ってるのとは違うのよ。山道も有れば行き止まりの道だって有るのよ。其れを乗り越えたからって、次には新しい間違いが有るのね。
マリーもやっと悟って来たのよ。1人だったら自殺してもヤケ酒で誤魔化しても、何とか立ち直れば好いのね。人の中で生きて居れば、其れが周りの人の重荷にも成るのね。
だったら間違いは生きてる限りは付き物だと割り切る事にしてるのよ。反省なんか何の意味も形も無いのね。其れよりも次の間違いを教訓として育って行くのが女の生き方だって思うのよ。」
「 其う割り切ろうとして日本を出たのよ。でも彷徨い続けてやっと此処に辿り着いたのよ。2年を支え続けて呉れたのは、彼の忍耐とお金なのね。やっと日本を忘れたと思ったらお母さんのお電話でしょう。
私は関係無いと思い込もうとしたのよ。でも何てバカだったのでしょう。陰に功が居るのに気が着いたのよ。むしろ彼が珠樹に変わって答えを出して呉れたのよ。
もう、功や柳橋は遥か見えない彼方の出来事だってね。お怪我や病気を気にし無ければ成らないのは余丁功と取り巻きの娘たちだってね。
ハッキリ言われたのよ。お歳なんだからお見送りするのはセックスした功の責任だって。
其れなりの施設も有るし、日本にはリハビリ病院も有るのですって。躓きやふらつきを専門に治療して居る病院も有るのですって。
練馬の北島病院などは、全国から悩みを持ち込む患者が多いって言われたのよ。ふらつきの治療は治そうとはし無いんですってね。何日でも患者の悩みを聴いて、其処の病院は安心を与えるって言われたのよ。
そんなのは余丁に遣らせて置けば好いって言われたのよ。海の向こうの其んな問題に悩むのがおかしいって。だから愚痴を零せる女性に来て貰おうって事に成ったのよ。」
「 そうなのね。来て見たらマリーを必要としてくれる人が居たのね。畠山さんも珠樹さんもマリーも何が欠けて居たのかって気が着いたのよ。思い出に拘ってたのね。マリーはハーバードをグチりたいのが出来なかったでしょう。アメリカでもエール大学にトップの座は奪われてるのよ。むしろハーバードを言ったら、きざな自慢話にされちゃうのね。彼も過去の難しい話をすれば、自慢と受け取られるのでしょう。ですからノミ仲間の愚痴としてなら話して聞けると思ったのよ。」
「 私って何処まで行ってもおバカさんなのね。愚痴が言えない女なのよ。彼が求めてるのは愚痴を言って、聞いて呉れる女だったのね。
口走る事も有ったのに、其れをセックスではぐらかして来たのよ。
ですから激しいセックスに成っちゃってたのね。此れを続けたら終いには生まれて来る娘に逃げる様に成るでしょうね。其れが怖いのよ。私に変わって彼の愚痴を聞いて、笑いながらのセックスで癒して貰いたいのよ。そしたら私がOKに成ったら、今までとは違う笑って愚痴を聴ける間に成りたいのよ。自分では判って居てもドウ仕様も無いおバカなんですのね。」
自然に言えましたのよ。マリーさんの36歳を頼りにしてね。