「 俺は有り余る物の中で暮らして来たんだ。キックバックの預金なんだが、今初めて思い返して居るのさ。」
「 待ってよ。仰りたい事は判る気がするのよ。マリーさんが来たらドウ遣って渡そうかって事なんでしょう。マリーさんは功に呼ばれて来た時は、何もかも失くした―――って、お金だけでは無くて地位も名誉もアメリカ人もハーバードも無くした哀れな女だったと思ってるのでしょう。私の事を考えてよ。芸者志願って柳橋のお玄関に立って居た時の事なのよ。其れ程落ちぶれてたかしら。
芸者って体を売るのは自然に知ってたのよ。でも、さあ此れからだってイキンデタのは覚えて居るわ。
マリーさんが同じだとは言わないけど、体に着いてた物が無く成った身軽さは有ると思うのよ。」
「 そうか、マリーに会う時の心がけとして、岩崎は捨てろって事なんだな。」
「 うーん、違うって言いたいのよ。貴男は私には素直に何も無いのに併せ様としたでしょう。
そうよ。高輪の大理石のお便所を嫌って、ホントはお外で立ちションしたかったのよ。其れを貴男がお湯殿で併せて下さったでしょう。
岩崎関東閣をふり捨てて、並んでおしっこしたのが始まりだったのよ。別に計画したのじゃ無かったけど、珠樹が知ってるのは其れしか無かったんですもの。
好いのよ、無理してマリーさんに併せるのは辞めて欲しいのよ。あの人がどんなお気持ちで来るのかから始めて欲しいのよ。」
「 そうか、指図も想像も捨てろって事なんだな。」
「 其れも少しは有るのよ。でもマリーさんの想いなんか、貴男にも私にも判らないでしょう。其処からでもスタートしなくちゃ為らないとしたら、私の時と同じに単純な所からスタートして欲しいのよ。女が欲しいのはセックスとお金なのね。
ルクセンブルグの貴男の口座は聞いたわ。其れってあの時並んで私が支えたおチンチンと同じなのよ。貴男が持ってるルクセンブルグのお金にマリーさんがドウ仰るかなのよ。
あの時の私と同じだと思ってよ。先ず貴男が裸に成ってルクセンブルグのお貯金を渡して見るのよ。何もかもマッサラナお気持ちでね。其処から何が生まれるかがスタートに成るでしょうね。」
訳が判ら無い事を云っちゃったのよ。私の混乱と同じ様に彼も焦ってると感じたからなのよ。
訳も分からずにバルセロナに呼び出されたのにOKしたのは、柳橋の玄関で立ってた私と似てると感じたんですもの。