「 しっかりして下さいな。私たち二人は、孤立した人間から寄り添ったのですのよ。私は17年暮らして居た三人の家族から一人に成りましたのよ。貴男は岩崎の組織の中で必要が無く成ったので放り出されたのでしょう。幾らお怒りに成ったとて、要らなく成ればゴミ同然でしたのでしょう。

          貴男は岩崎コンツェルンの大黒柱だと勘違い為さって居たのですよ。私を見付けて、時にはお互いが大黒柱として居なければ、二人の住まいが倒れて仕舞う立場で支え合って来たのでしょう。貴男が私の大黒柱なら、私も貴男の大黒柱として支え続ける努力をして来ましたのよ。

    此れは二人の人間だから出来たのですのよ。」


   「 うーむ、判るぞ。お前の考えてるのは、娘が産まれて三人に成ったら誰れが大黒柱に成るのかって事なんだな。」

   「 違いますのよ。二人でしたからお互いが状況に応じて大黒柱に成って来たと申し上げて居ますのよ。三人に成ったら交代で支え合うなんて許されませんのよ。二人で組めば残った一人は要らなく成るのですのよ。

           其れを申し上げて居るのですのよ。二人の世界って特別では無いのですのね。三人に成っても別に変わらず暮らして行きますでしょう。

           二人だったら何の混乱も無く支えて行けますのね。此れが8年の実績何でしょう。でも三人に成ったら、晩御飯に何を食べるのかは誰れが決めるんでしょう。そうですね。有耶無耶の中から暮らしが出来て来るのでしょう。

    おナマを言わせて貰いますと、人間社会の此れが基本なんですのよ。私に取っては貴男が独りの男なんですのね。今は貴男の女は私なんでしょう。娘が産まれましたら此の原則が元から崩れますのよ。珠樹はハッキリ意識して居ますのよ。三人を支えるのは先ず資産ですね。其の意味では貴男が大黒柱ですが、其の他の毎日ではコンガラカッタ時間を覚悟しなければ成りませんのよ。」

    ジッとお顔を見ましたのよ。


    長々と演説しましたけど、彼の理解力はチャンと判断して選り分けて呉れると思って居ましたのよ。

    「 そうか、お前が言いたいのは1対1の人間の関わりと言うか、覚悟の程が大勢の世界の中とは違うと言うのだな。

           何と言う事なんだろう。岩崎を首に成って思い違いを考える前にお前に救われたんだな。そうだったな。お前と面と向かって暮らして行くので岩崎の煩雑さを忘れて居たのだな。

    言われて見れば一人のお前が大きくのしかかって来たから全てを忘れた6年だったな。うーむ、

           楽しいので個が向き合った人生が何もかも変えたのに気が着かなかったな。

    そうか、娘が産まれたら俺の個も、お前の個も大黒柱に成らないって事なのだな。そうだな、よろめき乍らでも娘を育てて行かねば成らないのだな。」


   「 少し違いますのよ。お考えは判りますのね。でも珠樹が云いたいのは、貴男と二人でしたから男と女が貫けたと思いますのよ。

           娘が入って来たらを考えるのは先送りして、今面と向かわなければ成らないのは柳橋のお母さんなんですのね。あの方はお一人では暮らして行け無い困難に置かれましたでしょう。誰かが助けるとしたら功が負うべきなんでしょうね。

    其処で功なんですけど、マリーさんって伴侶と成る女性が居乍ら、どうして青森の10人の女性と関係を持って居るのでしょう。性的な関係を言ってるのでは有りませんのよ。マリーさんとは個として向き合うべきなのに、お母さんともセックスしちゃってまだ他の女性とも関係を続けると聞いてますのよ。

           1対1が人間関係の基本でしょう。其の基本が有ればこそ、生きる形を崩さない大黒柱の想いが基本に成るのに、大勢の女性の中で誰れが大黒柱として皆んなを支えて行けるのでしょうか。

    勿論一切の関係はお断りします。今お母さんからSOSを受けた以上は、貴男は彼女の――――そうなんですのよ。私を拾って呉れたのは弥太郎さんなんですのよ。

    弥太郎さんの昔馴染みでしたからお付き合いして来ましたけど、私がお付き合いして来た一人の女性なんですのよ。SOSは貴男がお請けに成ったのですから、此の機会に過去を清算しなければ成りませんのね。

           ハッキリ申し上げましょう。火の粉は珠樹にも娘にも架かって来ますのよ。現実には手を着けた功が負うべきでしょうが、マリーさんと10人の娘さんを抱えて大黒柱の自覚をもって責任が果たせますでしょうか。珠樹の結論を言いますと、マリー

さんが功の責めを負わねば成らなく成るでしょうね。

    さあ、ドウ為さいますか。」

         腕組みをして考え込みましたのよ。