「 どう為さるお積りなの。大たい骨の骨折って車椅子に成るのかしら。」

   「 マイナスの予測は禁物だが、歳から行って其う成るだろうな。問題は病院のリハリビなんだ。大学病院にはリハリビ科が有る筈だが、其れとは別にリハリビ専門の病院も有るのさ。其れって事は大学病院でも、リハリビで回復する患者は体力が有る若者に限られるって証明なのさ。だから車椅子に納得させるのが先なんだな。」

  「 柔道の骨接ぎってのドウかしら。」

   「 一高では柔道が正課だったから良く鍛えられたのさ。腕や脚の単純骨折だと添え木を当てて繋がるのを待つのさ。一度骨折すると其処は二度折れる事は無いと言われるんだ。剣道も正課だったから体を使う所が違うんだな。剣道の踏み込みは、爪先で一気にジャンプするからクルブシから下の複雑骨折が多いのさ。此れはギブスで固定して足を使わせない様にするから凄く面倒なのさ。若い内の骨折は激しい運動に拠るものが多いんだな。ギブスなんか使わなくても添え木で二十日もすれば繋がっちゃうのさ。」


   「 お母さんはボルトで固定してるって仰ってたでしょう。其れだったら傷が残っても筋肉の衰えは無いのと違うんかしら。」

   「 うーん、柔道で言うと大たい骨って体を支えてる一番太い骨だから、滅多に折れる事は無いのさ。ボルトで固定したって言うのは関節に近い骨折だからボルトで固定し無ければ成らないのさ。確か10センチが二本と言ってたな。まあ大たい骨の骨折の手当としては軽い方なのさ。もっと複雑に折れると柔道でも30センチもの板を骨の両側から抱かせて治すのさ。此れは骨が繋がるまで半年も掛かるんだぞ。

          まあ、奴の年から行ったらボルトは埋めたままに成るだろうな。」

   「 じゃあ、歩けなく成るって事なのね。」

     彼は渋いお顔を為さいましたのよ。


   「 其処は何とも言えないな。躓いて気を失ったと言ってたな。病院に担ぎ込まれてから何日に成るのか知らないが、恐らくベッドに固定されて動けないのだろうな。一番面倒なのが便秘がドノ程度なのかさ。小便は管で垂れ流しにするから、恥ずかしいのを除ぞけばそれ程の苦労は無いな。あの歳だったら1か月近くは退院できないな。問題なのは歩けるかどうかでは無いのさ。先ず寝たきりに成らないのには車いすで移動するしか無いだろうな。此れは厄介だぞ。車椅子に乗せたり下ろしたりするのも男の力が無ければ無理なんだな。其ればかりでは無いだろう。風呂に入れるのにもトイレに座らせるのも女では無理だな。

          やれやれ、此れは大ゴトに成るぞ。

   其れなりの男を雇うしか無いだろうが、奴が其れを許すかと言うと俺は無理だろうとしか言えないな。」

     判りますか、珠樹に問い掛けてるのよ。功に遣らせるしか無いだろうとね。