「 此処に来たのは大分前の気がするのよ。」
「 殆んど1ヵ月ぶりだと思うよ。前から声を掛けてたカサ・バトリョが売りに出たのでお前に知らせないで手に入れたのさ。一度来て外観の奇抜なのを嫌って住まないと言っただろう。」
「 ご免なさい。ホテルも其うだけど、見せ掛けで屈服させるのなんて嫌いなんですもの。お料理だってそうでしょう。パルは何処に行っても家庭の食器で出して下さるでしょう。ですから落ち着いて食べられるのよ。ガウディ―さんが外装を手掛けたって言うけど、ガウディ―さんと暮すのなんか真っ平だったのよ。驚いたわ、他所のお家みたいなんですもの。」
「 どうだ、珠樹の希望通りにした心算なんだ。繊維業者のカルベットがバルセロナの中心街に本社として作ったらしいのさ。だから周りは全部会社に成ってるだろう。何度かの改装でガウディ―に依頼したらしいんだ。ドウだ、考え様なんだがバルセロナのメイン通りのデイアゴナル通りとランブラス通りから一区画奥に入った街の中だから、観光客に煩わされ無いのが好いと思うのさ。」
「 だってレイ・ファン・カルロスとは違い過ぎるんですもの。アソコは何方かと言うと低層階でしょう。お庭も素敵ならモンジュイックにも歩いて行けるんですもの。此処が好い所と言ったらエンサンチャ病院に乳母車を挽いて行ける近さでしょう。子育てには向いてるとは思うのよ。でも此の外装は、どう考えても落着けないでしょう。」
「 おう、其れが珠樹向きかも知れないのだぞ。確かにレイ・ファン・カルロスはホテルとしては落ち着ける住まいに近いな。珠樹は呑み込まれて居るが、生まれて来る娘はドウなんだろう。むしろ此処の便利さと言うか、近代にマッチした住まいが受け容れ易いかも知れないだろう。まあ、中に入って見様。」
驚きましたのよ。まさかと思ってた素通しのバルコニーが出来てたんですもの。帆船をモチーフにしたバルコニーが目隠しに成って、総ガラス張りのサンデッキが出来てたんですのよ。彼の大笑いが憎らしいって無かったんですもの。