「 マリーと楠さんが帰って来るのは2か月後に決まったんだ。電話で言って来たのは根津の整理よりも、君たちが持ってる230万円の定期を無い物にしといてって言って来たんだ。何が有ったのか判るでしょう。」

    皆んなソッポを向いて僕の話を聴こうとし無いのさ。

   「 そうだね、言いたくないのは判ってるのさ。此処一週間お休みが続いてたから、今夜から一人ずつ失神させて中休みに聴き出しても好いんだよ。其れだったら僕との思い出の記念は何処かに飛んでっちゃって、6年前のイヤナ思い出が復活するでしょう。僕も君たちも其んな事は無かったとして、綺麗にオーストラリアに行きたいでしょう。恐らくマリーが楠さんに教えたと思うんだ。

          何も聴かないとすると、却って君たちが一人に成った時、他の9人がバラスのじゃ無いかって怯え続けるのになり兼ねないんだよ。

          もう僕たち13人は連帯の仲間なんだよ。

   君たち言ってたね。山田一人が僕とセックスを持って、皆んなと別の道を歩くのは違うんじゃ無いかってね。だから僕は君たち一人一人に思い出が残る様に交わりを作って来た心算だよ。朝までってのも何人か居たね。話をしたいって人には、一回で終わって笑いながら話をしたっけ。イヤナ想いは残って無い筈だよ。僕は山田も伊勢も鈴木も香西も、霞も中島も森も布施も坂本も五十嵐も、皆んなしっかり覚えてるよ。ありがとうって言える思い出をね。」


   流石に皆んな黙り込んだよ。

   「 生意気を言う様だが、話しを変えるよ。皆んな夫々に想いは有ると思うけど、話しの腰を折らないで聞いて欲しいんだ。」

   思い切って言っちゃったんだ。

   「 心の隅に残って居る棘は、何時か爆発する物なんだよ。僕の事を云うと、僕一人のトラウマは意外に僕の外には出て行かない物なのさ。だけど大勢の経験は凄く危険なんだよ。

         現実を言うけど、1人でボートをこぎ出して引っ繰り返っても笑い話で終わっちゃうんだよ。 

   其れが10人も20人も乗ってた渡し舟が引っ繰り返った時の救命胴着を取り合った思い出は、深刻に何時までも残るんだよ。

         神田市場では毎日男が換わってたでしょう。でも一対一の関係だったのさ。僅か二ヵ月の経験だったけど、深刻に成った事は無かった筈なんだよ。其れって公園の砂場のスカート捲りとそれ程の違いは無かったでしょう。むしろ幼児期の思い出が無い君たちには、性の通り道として受け止められた筈なのさ。

    だけど一つだけ、1ヵ月100万円のノルマを決めたのが今でも残ってるでしょう。其れを一番深刻に残して居るのが、実は山田と僕なんだよ。」


   皆んな思い出した様にお財布を握り締めたんだ。