「 1年もホテル住まいなんかイヤよ。其んなのだったら根津に居た方が自由が出来るでしょう。」

   「 君たち日本に居たいのかい。其れだったら好きにしたら好いでしょう。僕もオースラリアしか知らないよ。あのね、外国に憧れるっての何なんだろう。アメリカやブラジルでヒト稼ぎしようとしたのは昔の話しでしょう。巧く行かないのはもう知られてるでしょう。すると観光目的が外国旅行の殆んどに成ってるのさ。商売で行くって言っても、上手く行くのは幸運に恵まれた人だけなのさ。マリーの事を云いたくは無いけど、言葉も身分も一級のマリーだって油断したから危ない目に会ったのだよ。一番よく知ってるのはマリーなんだ。其れが電話に出ないってのは焦ったら落とし穴に嵌るのを言いたいのさ。」

       どうして其う決め付けるのよ。と、山田が切り出したのさ。


   「 オーストラリアをどれくらい知ってるのかな。

外国と言えばハワイかニューヨークか、パリと決めてるのでしょう。何も華やかだとか絵葉書に見てるエンパイヤステートビルに憧れるのでは無いでしょう。

           君たちオーストラリアはイギリスの囚人を送り込んだ開拓地だと聞かされてるのじゃ無いかな。

    イギリスが発見してからしばらくは放って置かれたんだよ。最初の白人が開拓に乗り込んだのが160年前なんだ。其の頃ヨーロッパでは博覧会が開かれてて、エッフェル塔も作られてたのさ。アメリカのエンパイヤビルも完成してたんだよ。

           僕が云いたいのは、オーストラリアは世界の近代化に取り残されてた野蛮な土地だとされてたのさ。僅か160年前まではね。

    其れから白人が乗り込んで、近代化が進められたとしても何が起きても不思議じゃ無い国なんだよ。其れをマリーは知ってるから、改築が1年後のサー・スタンフォードホテルに陣取ってるのさ。」


   「 其れってホントなの。アメリカ大陸に白人が上陸したのは500年前でしょう。ドウしてオースラリアには上陸し無かったのかしら。」

   「 知りたければマリーに聞けば好いのさ。160年の歴史ってのはホントだよ。オーストラリアに放したサラブレットが天敵が居ないので猛繁殖しちゃったのさ。其れを引き取って来たからオーストラリアは僕に感謝して居るのさ。サラブレットにとっては天国だったから、アッて間に増えすぎて始末に困ってたのさ。狭い日本では考えられ無い増え方だったのさ。其れを見てもオーストラリアには日本の常識は通らないのを知るのだね。マリーは良く知ってるから、1年単位でカレンダーを作ろうとしてるんだよ。1か月単位はダメって事なのさ。」

    僕も一度行っただけだから慌てるな、ゆっくり取り掛かろうぜ。位しか言えなかったのさ。