「 今の内に珠樹の17年を聴いて下さるかしら。」

   「 聞こうじゃないか。俺が知ってる娘たちは、サインを求めて来る高校生くらいなんだ。お前が心を空にしたいのと同じ想いで、俺のふしだらな学生時代を誰れかに打ち明けて仕舞いたいのさ。商事時代も若さに任せて飾り窓の女に入れ揚げた事も有ったさ。

         聴きたくは無いだろうが、商事の仕事は殆んどが騙し合いだったのだ。ヨーロッパのスポーツと言えばサッカーだな。ある意味ではスポーツとも言えないのさ。一つのボールを追ってる様に見えるが、11人の選手たちは騙し合いで動き回ってるのさ。プロのトップ選手に聞いたんだが、アル選手が蹴った球が相手に当たると此の辺に戻って来ると予想して待つのだそうだ。

   だから商事をお払い箱に成ったのは、怒りの様に見せてはいたが心の中は空に成って居たのさ。」


   不思議でしたのよ。彼とお腹の赤ちゃんで繋がったのでは無いのですのよ。何度かは彼のオスペが燃えたままで珠樹の卵の通路で待ち伏せしてるのを感じましたのよ。

         皆様の其れは存じませんわ。カメさんから発射されるのって痛い程ですのよ。珠樹のコブシの半分も無い子宮口に密着してるのが判るんですもの。熱いのよりも子宮も産道も彼ので満たされますでしょう。其れが二つのルートを争いながら攻めて来るのですのよ。ドッチかと言うと珠樹は低温症ですから35度そこそこなのに、燃える様な彼の奔流が卵の通り道で待ち伏せして居るのですのよ。

    お判り頂こうとは思って居ませんのよ。一日で静まる時も有りますし、一週間争ってご覧なさい。よっぽど心臓が丈夫でないとお腹の中が戦場に成ってるのですもの。

    ヘンなのね。明くる日も送り込まれて来ますのに、子宮はチャンと閉ざされて閂が開いてお外に吐き出しますのね。此の時だけは女の生殖だと感じますのよ。


   どうして話が逸れたんでしょう。

   「 皆さんお持ちの思い出を、細切れにしてご都合が好い様にお造りの様ですのね。珠樹の思い出は細切れにしても千住の豚小屋で二組のご夫婦との毎日しか無かったのですもの。

          4歳の娘が何で遊ぶと申しましても、

タダお迎えを待つだけのご夫婦のお話を聞くしか無かったのですのよ。殆んど同じ話しの繰り返しなんですが、少しずつ父と母がお医者さんと看護婦だってのは教わりましたのよ。

   好いお話では有りませんのね。其れよりも、貴男の大学時代を聴きたいのよ。」

   「 うーん、確かに記憶は断片的に成るのだな。恐らく脳が整理し切れないので細切れにしか覚えて居ない様なんだ。無理に繋げようとするとウソが多く成って仕舞うのさ。俺も話し相手が見付かったんだから空にしたいとは思うのさ。ドウだろう。取り止めが無い話で良ければ、思い出した断片を話したいんだ。」

   「 判りますのよ。珠樹も整理仕様とすると混乱に捲き込まれそうになるのよ。思い出すのを細切れで構わないのでしたら話して仕舞いたいのよ。眠く成ったら其れがピリオドにしてもってのなら、お話しましょう。」

    ヘンに落ち着いたんですもの。彼の膝枕でも興奮は起きませんでしたのよ。澄み切ったお空を何となく眺めながらね。