「 バルセロナって不思議な街ね。生まれてからズット居た様な気がするのよ。」

   「 其れは言えるな。ヨーロッパの中でも商売には向かない国なんだ。俺が云うのは輸入したり輸出を大きく動ごかそうとしても無理だって事なのさ。」

   「 其う言う意味なのね。シチリヤで驚いたのは、

パレルモに全部集まった一極集中みたいなのね。アルファ・ロメオで一周したでしょう。驚いたのは何百年もの暮らしを護ってる土地が多かったんですもの。何だか近代化に逆らって居る感じでしたでしょう。」


   「 そうか、俺も其れは感じたな。土地が貧しいだけでは無いと思うんだ。モロッコに行っても同じに感じたんだ。中世其の侭とも言えないし、封建とも古臭いのとも違うんだな。

          其処で暮らすのには守るも何も、其れしか無いって家と人なんだな。シチリヤの西海岸で気が着いたんだ。お店が有っても買手が居ないから品物も置いて無かっただろう。

   ガソリンスタンドが無いので、困り果てたのを覚えてるぞ。」


   「 そうでしたのね。開いてたお店で聴いたら、胡散臭そうにジロジロ確かめられて奥からドラム缶に入ったガソリンを持って来たでしょう。自動車はポツリポツリと走って居たのに、商売に仕様とは思わないのね。」

   「 其うなんだな。考えたら馬車に換わって自動詞に乗り換えただけなんだ。自動車が便利だとかドイツや日本の様に、自動車社会に移行するなんて考えないのだな。其処で住んでる人が生きて行ければ好いのさ。」

   「 千住が其うだったのよ。鉄道が通って居て駅は有るのに、お店は雑貨屋さんのヨーカ堂の三軒だけしか無かったのよ。見てたらお客は来ないから、タダお店を開いてるだけなのね。北千住って陸軍の倉庫が有るだけの駅なのね。

          江戸時代の小塚っ原って首塚が残ってる位ですから、誰れも住もうとし無いのね。

   なんだかバルセロナは人影が無くても人の息吹は感じる街なのね。」


   「 パルが好い例なのさ。昼と夜の顔が違うんだな。昼間は観光客の為に開いて居るから観光プライスだろう。ジロナの平原では米が採れるのにパエリヤは置いて無いだろう。聴いたら米は野菜なんだってさ。だから肉や魚の添え物には成らないって言われたのさ。」

   「 そうでしたのね。お米が主食では無いのね。でも缶詰で売ってるのですから―――」

   「 其処が違うのさ。缶に書いて有ったんだ。

          夜食用にってな。面白い発想だろう。主食は肉と魚や貝なんだな。其れだけ海の恵みを主食にしてるのさ。

   まあ、コロンブスが援助を求めて来たのは、

バルセロナが海の富で栄えて居たから何だろうな。」

   「 へんなのね。レイ・ファン・カルロスで暮らしたら他所に行きたいと思わないのよ。お庭も素敵なら借景みたいな感じでモンジュイックの森が有るでしょう。其れに貴男が居るから手を繋いで歩いても誰れも見向きもし無いでしょう。つい17歳に戻って仕舞うのよ。」

          ホントなのよ。半大人の感じなんですもの。彼だって駒場の一高時代を言うのですのよ。東大を忘れてるのですもの。オママゴトって言うけど、其の気に成るからまだ赤ちゃんは困りますでしょう。