「 大きなお船ね。列車に乗ったままでシチリヤに渡れるんでいものね。手が届きそうに近いのよ。此んなお船を作るんでしたら橋を架けた方が安上がりでは無いでしょうか。」

   「 其の話は何度も出たそうなんだ。何しろ日本と似て、火山と地震が多い国なんだな。シチリヤのエトナ山も今は大人しくしているが、何時噴火が起きても不思議では無い山なのさ。世界に類を見ないベスビオ山の噴火で、ポンペイの街は逃げる間もなく火山灰に埋まってしまっただろう。其れが有るから橋は架けられないし、イザと言う時の脱出にこの船が準備されてるのさ。」


   「 お~怖い。行くの辞めましょう。」

   「 エトナ山に登りたいって仰ったのは何方様なのかな。なーに、タオルミーナもシチリヤでは別扱いにされてるのさ。エトナ山の丘陵に作られた街なんだ。車の通行を禁じてる裏には、エトナ山の噴火が有れば見捨てられる街なのさ。地中海の風を受けてる丘陵だから温暖な保養地を売り物にしているが、イタリアにとっても特殊な街なのさ。イタリア南部の最高峰のポリーノ山も2000メーターそこそこの山なのさ。エトナ山は富士山に匹敵する山なんだ。温暖な地中海の風を受けてる保養地でも有るし、観光のメッカとしても重要なタオルミーナなのさ。空き家の建て替えに永住の申請をしてパレルモの工務店に多大な資金を提供したから俺たちは永住権を得られたのさ。」


   「 其うでしたのね。シチリヤってブドウしか出来ない土地だと思ってましたのよ。タオルミーナには其うした狙いが有ったのですのね。」

   「 好いでは無いか。権の奴がドウ出るのかは知らないが、イタリアを初めとしてヨーロッパ各国はアフリカからの移民に悩まされて居るのさ。スペインはフランコの独裁を貴族連中がバックアップしたのは、ある意味では移民対策なのさ。俺たちはシチリヤ政庁の永住権を持って居るから自由に暮らして居るが、中国人もユダヤも永住は許されて居ないのさ。レイ・ファン・カルロスに住んで判ったと思うが、パルでも異邦人扱いをされないのはタオルミーナの永住権を持って居るからなのさ。」

   「 そうでしたのね。では権藤様ご夫婦も、スペインには長居は出来ませんのね。」

   「 何だ、其の嬉しそうな顔は。奴らがドウ出様と俺たちには関係が無く成るのさ。まして生まれて来る娘はスペイン国籍に成るのだ。俺たちは帰化しても好いし、日本国籍で居ても好いのさ。有りがたい自由が有るのだ。俺も三つ違いのお前と添い遂げられるのなら、妹を考えても好いぞ。」

   もうダメ、メロメロにされたメッシナ海峡でしたのよ。