「 何を云おうとしたのかしら。25年、女の世界しか知らなかったって言いたいのよ。貴男に拾って頂いてから柳橋でしょう。悪いけど貴男って男の性が生きては居なかったのよ。高輪に居たお女中さんは姿が消えちゃったでしょう。明くる日からはお二人の執事様とビュイックの運転手さんだけでしょう。ホントを言うと狂いそうだったのよ。

       にょごが島って女性だけの世界を言うのでしょう。其れとは逆で、ご年配の男の世界に放り込まれた感じでしたのよ。賄は帝国ホテルのコックさんでしょう。ホントを言うと女で居たのでは殺されるとまで思ったのよ。

    考えたのよ。女を見せたら皆んなに玩具にされるってね。ですからチャンとおチンチンで立ちションが出来るのを見せ様としたのよ。」


   「 そうだったのか。いや、魂消たのなんのって、ガンとしてトイレはノーだろう。試しに湯殿に連れてったら俺も脱げってだったな。ピョコンと飛び出してるおさねを持たせただろう。何しろ初めてだから慌てたのなんのって、思わず並んで遣っちゃっただろう。笑った顔が子供見たいだったな。其れからの十日は夢の中だったな。柳橋に連れてったら、女将を初め10人の芸者衆もお前だと気が着かないだろう。

         もう、俺の女としてしか見なかったんだな

   まさか、手が出せなかったとは言えないだろう。其れから夜まで、柳橋で暮らす様に成ったんだな。」


   「 そうなんですのよ。てっきり夜のオツトメが有るので高輪に帰るって成っちゃったのね。今更

         まだですなんて言えないでしょう。

恍けるのって大変でしたのよ。」


   「 懐かしいと言えば其れまでだな。確かに女ばかりの世界で暮らして来たのだな。」

   「 そうなんですのよ。共立に入れられましたのも女子校でしょう。でも1学級で一年ずつ飛び級に成るのを聴かされて居ましたから、遅れて居る

         ってよりも、まるで知らないお勉強に追い付くので必死でしたのよ。ですから女の生徒さんも意識なんかしてませんでしたのね。

    明くる年はいきなり聖心女子大でしょう。1週間で慣れましたのよ。柳橋と似た様な井戸端会議だったのですもの。

         畠山珠樹で通って居ましたけど、本名は岩崎珠樹って決められてましたのね。ですから1年から親分に祭り上げられて、広尾に脱出するのが毎日でしたのよ。

    何しろ別格扱いでしたから、女の世界と言うよりも柳橋の延長の様な感じの4年でしたのね。」


   「 済まなかったな。言って呉れれば大学を換えたのにな。」

   「 好いのよ、珠樹にとっては息抜きが出来る聖心でしたのよ。その代わりに毎日がおふざけの井戸端会議で、娘の本質に触れる日は無かったのですのよ。4年で皆様方も似た様なご家庭なのを知りましたの。お母上ともご姉妹とも、

         ダンマリかいがみ合いが日常なのを教えられましたのよ。女の話しって

         意識して真実には触れない様にして居ますのね。ですから聖心に来て、ホッと為さる生徒さんが多かったのですのよ。

   「 其んな物なのかな。不思議だとも言えるのだな。女の世界で生きて来て、本音を隠していつわりの世界で暮らして来たとはな。」

   「 多くの女性が本音を隠して生きて行くのが普通なんですのね。母とは口数こそ少なかったのですが、本音で生きて来たのを教えられましたのよ。此れからの妊娠にも、お医者様や周りの方の仰せは納得した様に見せますのよ。でもホントの妊娠は、母に教わった様にしたいと思いますのよ。」

   「 判ったぞ、権の奥方にも同じにすれば好いのだろう。まあ、近付いて来るのはショウガ無いとしても、踏み込まれ無い様にすれば好いのだろう。」

   と仰いますけど、女の複雑さはヤー様では受け止められ無いのが判って居ますのよ。