「 岩崎商事の30年を見て来て、権の仕事は将に算術だと感じたのさ。」
「 判らないわ。私ってドンなのよ。算術のお仕事って何なのかしら。」
「 恍けなくても判ってる顔だろう。6年の高輪は何だと思ってるんだ。俺には素直に成って呉れよ。」
「 ヤッパリね。見抜かれてるのがシャクなのよ。
私にだって人格ってのが有るのよ。」
「 ほら、人格何て言葉で交わして来るだろう。算術って足し算引き算を言うのさ。奴はソツ無く纏めるのは上手いのさ。
俺はフンフンと聴くが、無視するのが多かったな。商売を算術で纏めようとしたら、相手に足元を掬われるのさ。お前に商売を云ったって仕方が無いとは思うさ
今でも奴が商事時代から抜けられないとしたら、此の先カミさんに敷かれるのも止むを得ないな。」
「 其れが困るって言ってるでしょう。何とかしてよ。」
「 おう、今度は表から来たな。なーに、一度は日本に帰るな。退職金の額が違うだろう。奴はプラマイの計算をするだろうが、カミさんは娘を奴に取られ無い様に金で縛ろうとするだろうさ。その狙いで思い切って弾んだんだ。三人の娘は知らないが、先ずカミさんよりは達者に決まってるだろう。三人姉妹って壮絶な争いをするらしいからな。金だけはチャッカリ手に入れて、お舅さんが居着いては困るだろう。まあ好いさ。舞い戻って来ても俺は算術には嵌らないぞ。煽てたり同情したりの感情論で付き合うのさ。お前がアレだけピシッと決めたんだから、もうお前には逃げ込めないのは悟ってるだろうさ。
小出しに傍に寄るなを教えて遣るさ
まあ、カミさんが孕んだら其れも好いだろうさ。」
ご立派って言って挙げたかったのよ。お父さんに近付いて来たのをね。