「 うーむ、何ともヤヤコシイ事に成ったな。」
「 あら、ちっともヤヤコシクは無いでしょう。私たち二人でしたら好きなパルに行けば好いのでしょう。
娘が居たらパルのお父さんに見せたいとも思うでしょう。モンジュイックのカタルーニャ美術館の窓際の指定席で、娘に貴男にしたのと同じにセビーリャの卵のフラミンコを口移しで食べさせて挙げたいのよ。あそこのパルだったら許されると思うのに、小母さんに割り込まれるのって我慢できないのよ。
其れって旦那が悪いのよ。」
「 おう、其う来たか。奴を教育しろと言うのだな。」
「 ホントは其う思って居たと話したでしょう。確かに奥様には我慢して居ましたけど、
権藤様が傍に居て下さるのなら奥様に来てもらいたく無かった
と迄ハッキリ言ったのに、奥様を庇って居らしたでしょう。夫婦の姿勢としてはご立派だと思ったのよ。」
「 そうだったな。何方かと言うと奴の40年の付き合いの中で、どうしても甘く成るのだ。お前が言うのが正しいのは判るけど、其れだけで割り切れる物では無いのだぞ。」
「 判ってる心算なのよ。でも考えてよ。娘には我慢だけを教えたら、心の芯が薄れる娘に育つのが怖いのよ。
奥様は一度は子育てに失敗為さったのよ。旦那様が単身赴任だと考えれば、何が何でも我武者羅に子育てに励んだと思うのよ。其れが出来なかったのは権藤様にも責任が有ると申し上げたでしょう。
あの時は高輪に私が割り込んだから戸惑いが有ったと思ってますのよ。
其の戸惑いを此れからも続けるのなら、お互いの子供に良く無いって言ってるのよ
貴男も判ってるのね。解決のカギは権藤様が握ってるとね。女って亭主次第なのよ。何の為に大昔の千住を持ち出したとお想いかしら。母が死ななければ成ら無い処に追い込んだのは、父の不甲斐なさが原因でしたのよ。
貴男を此の男に成らと想わせたのは母の教訓が有ったからなのよ
シッカリしてよ。瀬戸際に懸かって居るのよ。お腹の娘の為に何をし無ければってのを考えてよ。」
母は強よしを武器にして迫りましたのよ。