「 もう一つの転機なんだ。根津の連中は卒業式には出たくない様に思えるんだ。卒業式と言うよりも、十文字の三年に複雑な思いが有る様に思えて成らないのさ。」
「 其れは感じて居たわ。卒業式は別に考えても、3年の複雑さは感じているのよ。」
「 いや、其うでは無いんだよ。卒業式と3年は、離しては考えられないんだ。僕は卒業式が一つの区切りに成ると思って居たのだが、其んな軽はずみに出来ない気がするのさ。此処に来て彼女たちが何を思うかなんだ。ドウも十文字の3年に区切りを付けられない何かが有る様に思えるんだ。」
「 うーん、単純には卒業式をイベントと言うか。区切りにするのに何かが引っ掛かって居ると言うのね。」
「 そうなんだよ。卒業式を単純に喜べないムードを感じるんだ。幾つも其の兆候は有ったのさ。京都なんだけど、何時もと違ってお土産無しでしょう。それと無く山田に聞いたら、其んな雰囲気では無かったって言ったんだ。西陣織会館に寄ろうとしても皆んなソッポを向いて返事もし無かったって言うじゃ無い。
卒業式も和服も関係無いってムードだったらしいのさ。一つには金沢で落ち合う筈の僕が来なかったのが、全部をぶち壊したって言ったのさ。 」
「 そうよ、其れはマリーも感じて居たのよ。時間が経つに連れて娘たちは無口に成って行くでしょう。何が気に食わないのか判らなかったのよ。もうお夕飯にはヤケ酒なんですもの。イヤでも気が着くでしょう。マリーに当たるヤケ酒なんですもの。功が来ないのでイライラを抑え様としてたのに、娘たちのイライラが同じなのに気が着いたのよ。何とか飲ませて忘れさせよとしたのよ。明くる日に成ったら旅行に当たり出したのよ。まずいって無いでしょう。ですから兼六園もそこそこにして京都に向かったのよ。」
「 済まない、山田にも言われたんだ。
2年ぶりに楽しみにしてた混浴をすっぽかされたのを、何処に当たったら好いのかやり場が無かったって言われたのさ
だから卒業式に当たるしか無かったんだって。
抱いても半ベソなんだよ。判るかな、愚痴を零したいのを我慢してるのさ。言えないんじゃ無いのさ。ホントの悩みは僕に隠したいんだ。判るでしょう、何が悩みだったのかは山田も纏められない複雑なんだね。此れって思い遣って遣るしか無いんだよ。」
「 其うだったのね。功と娘との間には、割って入れない物が有るのね。やっと落ち着いて考えられる様に成ったのよ。難しいわ、マリーに零せないってまだ功とかなりの開きが有るのですものね。」
「 其れは違うと思うよ。根津を離れたのはお互いに外から見て見様とした所も有ったのさ。此れが1対1だったら別の関係も有ったと思うんだ。10人を何とかし無ければなんだから、冷たくする冷静さも必要でしょう。今でも同じなんだ。娘たちの卒業式を船出にして遣りたいさ。其れを遣ったら飛び立って行けなく成るってのが怖いのさ。ドウしたら好いのかはマリーを間に建てるより無いんだよ。先行きはって言ったら、実家を作って待つしか無いんだ。10年と思ってるのさ。あの子達が僕の影が薄く成って、必要な時に思い出して呉れるのがね。」
何とも遣り切れない想いでした。