「 売春って男の欲望を満足させるのに、黙って男の下に居ればお金に成るのだね。楠さんを悪く言いたくないけど、其うして手に入れたお金を溜める気は無かったんだ。先を見るのよりも今の快楽を手に入れたいのを求め続けたのさ。」
「 何が言いたいのか先に言ってよ。」
「 実は僕が生きてく基が此れなんだよ。多摩川の小屋に来てリンゴ箱の札束に驚いたでしょう。マリーが言ったのは
盗まれたらってだったね。
使う気も無いから無く成ったってドウって気も無かったんだよ。丁度あの子達が売春で手に入れたお金は使う気は無かったのと同じだったのさ。
女衒に掴まらなければで神田市場から出ないのには、親方たちを利用するしか無いと悟ったのさ。
三ヵ月女衒の怖さを教えて、神田市場だけが隠れられる砦を教えたんだ。初音町は焼け残った貧民屈だったから、安全とは言えなくてもあそこで市場に行くまで隠れて居るしか無かったんだよ。」
「 此う言う事なんでしょう。10人の娘たちはお金は溜める物だと決めてるって何でしょう。」
「 そうだよ。多摩川河岸で僕がやってたのと同じ想いを持ってたのさ。
お金は万一の為に溜める物だってね。其の万一が今なんだよ。僕はお金を溜めるだけなんだ
じゃあ、娘たちはって言うと、使うお金が有るのなら溜めようとしてるのさ。持って来て貰った10億円は、娘たちの為に使って欲しいのさ。僕にも娘達にもドウ使ったら好いのかが判らないのさ。其れをマリーに頼もうって事なんだよ。」
「 うーん、マリーが思ってたのと少し違うのね。
1000万円でって考えてたけど、半分で余ったら娘たちにキャッシュで配ろうと思ってたのよ。そうか、全部使えって事なのね。」
「 そうなんだよ。娘たちも僕も使うのは苦手だから、全部マリーが分配して欲しいんだ。三越のマネジャーには別の手で遣り損なったと思わない様に
して欲しいんだ。更にもう
一つ頼みが有るのさ。」
「 なによ。驚かないからズバリ言ってよ。」
「 頼んどいたマリーの銀行保証の小切手なんだ。マリーがケンされずに雅叙園に来れる様にするのは別に考えるよ。其の小切手で娘たちが雅叙園に来ても、前も後も関係無く歓迎される様にして欲しいんだよ。例を挙げると何人もの子供を連れて来る事も有るでしょうね。もっと複雑なケースだって無いとは言わせないよ。結婚した男が連れて来た子供は断れない事だってあり得るでしょう。僕が知ってる女性は、旦那が交通事故で無く成って残された6人の子供とお舅さんを抱え込んだ人も居たのだよ。だから無条件で娘たちが泊まれる雅叙園にしといて欲しいのさ。僕に出来るのはお金を出すだけなのさ。頼めるかな。」
考え込んじゃったよ。思いがけない女性の問題を言われたからなのさ。1億分の1かも知れないね。だけど有っても不思議では無いケースなんだよ。実家を覚悟するからには、1ダースの子供を連れて来る事だって有り得るのさ。だから備えとして、トテツモナイお金を溜めてるのさ。