モロッコ航路の船酔いで嫌いに成った地中海の美しかった事。真っ暗な海岸線に散りばめた様な漁船の明かりが灯ってましたのよ。コンパートメントを出て手すりに寄り掛かって彼と眺めて居ましたの。
モンジュイックのベンチでは彼のお膝に頭を乗せて、星空を眺めて居ましたのよ。
「 寒いだろう。」
と、ジャケットを御脱ぎに成って珠樹のお腹に巻いて下さいましたのよ。泣き顔なんか見せられませんでしょう。手すりの彼の手が熱かった事。
クシュンってすすり上げましたの。ハンカ
チで鼻を拭く真似を成さったのですのよ
嬉しいも何も高校生のデートでしたのよ。
「 あの灯、走って居るのかしら。ドンドン遠く成って行く様よ。」
何て事も有りませんのよ。訳も無く一緒に居るだけなんですもの。あんなに嫌ってた地中海が二人を引き寄せた居るのですのよ。
「 そうよ、三人に成るのよ。」
「 いや、四人だろう。こっち側に娘が居て、お前の傍に男の子が居るんだ。男の子は母親に似ると言うだろう。そうだな、じゃじゃ馬の母親似だったら勇ましい子に成るだろうな。」
何て事は無かったのですもの。二人で作った赤ちゃんの物語を二人で作ろうとして居るのですのよ。
ヘンなんですのよ。逆らって見たいと思ってますのに、一緒の夢に成っちゃうのですのよ。
「 何ともヘンチクリンなんだ。お前も同じ夢を見てると想っちゃうのさ。ホントに25なんだろうな。母親としては適齢なんだろうから、俺も三つ違いの28でも好いだろう。いや今は、三つ下の22に成った気持ちなんだ。早く動くのを見たいな。」
もう、其れだけでしたのよ。ヘンにロマンチックだったのですの。珠樹も初めてでしたのに、有んなに聳えて居た岩崎弥太郎さんが初めて並んだ気に成りましたのよ。モンジュイックでも此んなにお優しい事って無かったのですのよ。
「 欲しいの、チョットで好いから。」
お首を逸らしておでこに下さったのですのよ。
「 イヤよ、柳橋の式台に仁王立ちしてた貴男が欲しいのよ。チョットで好いから―――」
今までに無かった事でしたのよ。震えて歯が当たりましたの。珠樹の倍の唇が迷い始めましたのよ。追い掛ける珠樹に併せようと為さって震えるんですもの。トレヴィのファーストキスでも無かった事でしたの。珠樹の真っ赤なベロをシッカリ唇で咥えましたのよ。吸い込もうと為さいますからチョッピリ抵抗しましたの。大きなお手が珠樹の頬を挟みましたの。
厚くてグローブの様なお手なんですのよ。珠樹を潰さないようにを感じますでしょう。少しずつ吸い込まれて重なりましたのよ。燃えるベロに巻き込まれるのって堪らないんですもの。モンジュイックでしたらお首に巻き着いて彼のスネを蹴るのが何時もでしたの。膝を床に折って厚い胸にしがみ付きましたの。おズボンの上からでも感じるコチコチのカメさんが柔らかいんですもの。珠樹の頬を挟んで居るグローブが
ソットだぞ、血液検査が待てないのはお腹の子供に―――――
って、判るんですもの。ホントにソットの接吻でしたのよ。