「 ドウなんでしょう。スペインは住み難い国なんでしょうか。」
「 俺にも判らなかったんだ。商売の相手国としては確かに遣りずらい面も有ったな。一つにはフランコの独裁が長いだろう。此れが又不思議なんだな。多くの貴族がフランコを認めて居るから独裁と言ってもドイツやフランスとは違う歴史が生きてるのさ。」
「 独裁って軍政なんでしょう。バルセロナには軍隊が居ない見たいなのね。其れで平和が保たれて居るのって、ドウ成って居るのかしら。」
「 俺もバルセロナのホントは知らなかったんだ。ガイド免許を取るので勉強したのだが、お隣のフランスとポルトガルとも少しも変っては居ないのさ。上手い具合に出来てるのだな。物価を取って見てもフランスよりは割高なんだ。其れで居て庶民の知恵が生きて居るのだな。他所から来て住むのには金がかかる土地なのさ。だから住むには金がかかる国なのさ。」
「 あら、私は使うだけですから少しは控えめにしますのよ。」
大笑いなさいましたのよ。何が可笑しいのか珠樹の金銭感覚をお笑いに成ったと想いましたの。
「 済まんすまん。少し違うのさ。此処なんだが家賃は格安なのさ。他所から来たものは外観に恐れを成して寄り付かないだろう。住んで見れば好い住まいなんだ。市場も同じだな。確かに観光客をレイアール広場に誘い込む形でランブラス通りは作られて居るな。バルセロナもご多分に漏れず、娼婦と麻薬はかなり多いな。ランブラス通りを見れば判るだろうが、多くの店は観光プライスで高額も好いとこなのさ。其れをもっと増幅するのがレイアール広場なんだ。お前が嫌うのが正解なのさ。レイアール広場に売春と麻薬を閉じ込めて有るのだ。此れが出来るのは業者を含めて全てが余所者で成り立って居るのさ。いわば、バルセロナとは違う地域だとしてな。」
「 其れで収まるのでしたらフランスもシチリヤも其れに倣えば好いでしょう。」
「 其うは行かないのがスペインの豊かさなんだ。長い歴史で組み立てられたバルセロナなのさ。一見貴族王侯が芸術家を囲い込んだように見えるが、其れには狙いが隠されて居たのさ。見れば判ると思うが、ミロでもピカソでもガウディでも、庶民の暮らしとは別の世界に閉じ込めたのだな。つまり、滅多やたらに美術館成る物を作って、豊かさを見せる一方で庶民の暮らしを芸術とは別の住み易い暮らしに作り上げたのさ。巧妙と言うよりは此れがバルセロナの歴史なんだな。世界では芸術を暮しに取り入れようとするのだが、スペインでは暮らしの豊かさを壊さない様に芸術を取り入れたのさ。ガウディのサグラダ・ファミリヤを見れば明らかだが、庶民のカテドラルとは異質の礼拝堂として作って有るのさ。其れでガウディも生きて行けるし、庶民もバルセロナに根付いた暮らしが出来る様に成って居るのさ。」
「 レイ・ファン・カルロスのお庭も素敵ですけど、其れよりもモンジュイックの森は素晴らしいわ。何処を探しても有んな森に、人影が見当たらないって考えられないでしょう。オリンピックも万博も実行されたのにしては観光に使おうとは思って居ない様なんですもの。噴水だって見事ですのに、トレヴィの様に観光客を呼び込めば好いと思うのよ。」
「 まだバルセロナを理解して居ないのだな。観光客が落す金は要らないのさ。モンジュイックの丘は庶民の憩いの場として取って有るのさ。ミロの美術館には世界の何処よりも多くの作品が集められて居るのさ。其れを見せるのが美術館では無いのだな。ミロと言う絵描きが居た足跡を残して居るだけなんだ。驚いた豊かさだろう。見たければ観光プライスの入場料を払わねば為らないのさ。日本の様に学童を強制的に美術の鑑賞に動員するのとは違うのさ。
見たかったら其れ成りのお金を払いなさ
いと言うのだな。芸術の鑑賞の費用とは
別だとして居るのさ。人間が住むのとは
別だとな
バルセロナが言って居るのは芸術と暮らしは別だと言う事なのさ。」
まだ判りませんのよ。でも彼と一緒ならこれ程住み易い街は無いのですもの。レイ・ファン・カルロスとモンジュイックに魅せられて居たのから一歩前進した思いでしたのよ。