薄暗い貨車の中で母を待つ日が来ました。

檻の中でノッシノッシと歩く白ぶたでは無いのですのよ。

        手鏡でニキビを潰す娘とは違いますの

        よ。マニキュアに時間を潰すのでも無い

        のですのよ

新しい暮らしに馴染むのには、一回の抱擁で十分でしたのよ。燃える心を持ちながら、接触に逆らって居る母子がドンナ想いで8年を生きて来たのかお判り頂けなくても構いませんのよ。


        冷めた心を望んだ時も有りましたのよ

不思議でしたの。四人のご老人には現実逃避の冷めようとする心を感じて居ましたのよ。人って冷めきれる者では無いのですのよ。4歳の娘に話し掛けられて、逃げられる物では無いのですの。呼び戻された熱い心との葛藤を、子供でも感じて居ましたのよ。

    珠樹の4歳からは一日の積み重ねでしたのよ。自然にご老人にも一日が見えて来たのですもの。ご夫婦だけの心に4歳の娘の一日が割り込んで来ただけですのよ。

        冷め切って終わりを迎えようとした冷め

        た心に、4歳の娘の熱が入り込みまし

        たのよ

氷が溶ける4年でしたのね。今は違いますのね。


   孤独って、自分で作って居るのですのよ。

独りで薄暗い貨車の中に居ても、夢も悪魔も作れますのよ。

        母が来て呉れる

その他に何を望めば好いのでしょうか。複雑なのは世の中に任せて置けば好いのですのね。単純に居て何か不都合が有りますでしょうか。極く極く単純に生きてるだけなんですのよ。そうなんですの。

        眠く成りましょう。浅い眠りでも好いって

        心の内で言ってるのですもの

段々現実が薄れて来て、頭がガクンと来るのが合図なんですのね。貨車の扉に背をもたせて夢の世界を演出するのですのよ。夢って神様だって作って呉れませんのよ。自分で作るしか無いのですもの。

        オールカラーの夢も有れば、モノクロ 

        だって作れますでしょう。サイレント映画

        だって好いでしょう

時には瀬戸内の海を作るのも自由なんですもの。


   そうなんですのよ。誰かと見たメリーポピンズを母と見たって好いでしょう。夢だからって毎日でも一瞬でも、作ろうとすれば作れますのよ。薄暗い貨車は絶好の演舞場に成ったのですもの。閉じた目に母が浮かんで来て、お弁当の匂いに起こされるのってそれも又素敵なんですのよ。

        夢を作るのを誰れにも邪魔されないのですもの。此んな素敵な時間が何時までも続けば好いなって想う毎日でしたのよ。