中の坊瑞苑では雅叙園の投資が生きて居た。
「 改装にドレくらい投資したの。」
「 雅叙園とは比べ様が無いよ。52部屋の30を自由に使うのだから、普通だったら借り切るのに一部屋10万円ってとこかな。有馬温泉の相場の20倍はするのさ。」
「 其んなにお高いのね。雅叙園の1週間では幾らだったの。」
「 あそこはバカ安も好いとこだったのさ。二人で食事も込みで一人2000円の請求だったのさ。元々は岩崎の迎賓館の宴会施設だったから、相場が有って無い様なお座敷だったのさ。僕たちが泊まったのは一泊が必要な縁戚の仮泊まりの部屋だったのさ。中の坊瑞苑はレッキとした旅館なんだ。まあ泊まるとしたら5万円ってとこかな。」
「 何も有馬温泉で無くても良かったのよ。神戸の夜景を見せるだけでもあの人たちには息抜きに最高なんですもの。」
「 違うんだよ。まだ全面改装が済んで居ないのさ。日本人から見たら荒らした襖や畳なんかも絨毯で誤魔化して有るけど、古い格式の日本旅館を見せたかったのさ。奈良ホテルにも一度泊まったよ。確かにホテルとしては一流何でしょうが、日本旅館の良さを堪能して貰うのに改装費の半分を投資したのさ。行って見れば判ると思うよ。本物の日本旅館がね。」
僕も行って見たのでは無かったのさ。有馬温泉は知らなかったのだが、奈良ホテルにはガッカリしたので本物の旅館に泊まりたかったのさ。マリーが聴いたら腰を抜かすほどの投資はしたよ。一度はとは想ってたのが今回はマリーがリクェストを適当にアレンジ出来たのでムダ金だとは思わなかったんだ。
アメリカに帰ってからは僕とは関係が無く
成るのさ。日本に居る1年チョットで変化
に立ち向かえる気心を作って欲しかった
のさ
1年で変えようとしたら無理に決まってるでしょう。でも少しずつは思い掛けない状況も経験して欲しかったんだ。雅叙園で判ったのは、ホントの貧乏と苦しみを知らないって事なんだよ。本人は苦しんだと思ってるでしょうが、底辺から這い上がるってのは其れとは違うモヤモヤが有るのさ。
極限の悪い例だけど、殺されるのが眼の前に迫った時にはナイフをドウ交わすかを体で覚えるしか無いのだよ。人を殺したのでは無いけど、多摩川河岸に巣食ってた50匹もの野犬を退治したってのは、一匹残らず鞭で絞め殺して多摩川に投げ捨てたんだ。サラブレットは其れをジッと見てたから川に入れるのを逆らわなかったんだよ。野犬を追い払ったのでは無いのだよ。1年懸けて奴らの習性を読んで、一匹ずつ追い詰めて殺したんだ。群れを作った野犬は狼と同じなんだよ。殺さなければこっちが殺されるんだ。其れをサラブレットは体で知ってたから僕に懐いたのさ。此れが僕の極限なんだよ。