「 早くから特級つばめの一等車両の前売りを手に入れといたのさ。神戸って日本の女性にはエキゾチックが堪らないらしいんだね。東京に居ると
京都と奈良が特別な想いを持ってるの
だね。でも神戸の洋館の街並みだけでは
無いんだよ。知られて居ないのがハイク
ラスの住まいなんだ
芦屋がその代表の様に言われて居るけど、ドッコイ神戸は日本人にも外人の奥方たちにも関西の一等地として思われて居るのさ。
「 あら、ツバメの車両を何時契約してたのよ。」
「 驚かそうと思ってマリーには一等車を契約し解いたのさ。」
「 又騙すんだから。泣いたって知らないからね。」
「 そうじゃないんだよ。奥方たちを有馬温泉の接収解除された中の坊瑞苑に招待しようと思うんだよ。」
「 あら、有馬温背はマリーも行きたかったのよ。中の坊瑞苑が接収されてると聞いてたから、行ける物ならって想ってたのよ。もう解除されたのね。六甲川のホトリニ建つ老舗旅館だって聞いてたのよ。今から予約を入れても何年か先に成るでしょう。」
「 実は接収解除されても中はメチャクチャに使われてたから取り壊す段取りに成ってたんだ。思い切って投資して半分は手直しで営業を続ける契約にしたのさ。神戸の質屋連合会の協力でね。」
「 驚いた人ね。何時の間に其んな事遣ってたのよ。」
「 だから他人が建てたスケジュールを横取りしたのさ。神戸の質屋連合会が資金を出す計画を聴いたから半分乗ったのさ。
断っとくけどフィクションなんだから
中の坊瑞苑を使ったって好いでしょう
ついでに教えとくけど、10台のローバーを神戸に回送しといたんだ。
ドウヤッテ運んだのだって?進駐軍の
トレーラーを使ったのでしょう
悪いけど、ビュイックを運ぶのだったらアメちゃんを使っても好いよ。バカにしてるロールスロイスの小型車なんだから日通を使ったのさ。ヘンな顔をし無いでよ。フィクションだって言ったでしょう。1950年の東海道なんかローバー向きには出来て無いんだよ。雨が降れば穴ぼこだらけだし、進駐軍のトレーラーだって穴に嵌って立ち往生してた時代なんだよ。金谷峠なんか狭くてトレーラーは通るのがやっとだから、先導者のジープが車止めをして峠を越したんだよ。」
「 あら、良くご存じだ事。」
「 五月蠅いなあ、折角神戸の連合会が建てたスケジュールに割り込んでるのだから、黙って聞いて欲しいのさ。中の坊瑞苑って300年の歴史が有るのだよ。其れを進駐軍が土足で踏みにじって荒らしたから犬小屋同然に成っちゃったんだ。52室の内30室は改装させて有るから子供たちも喜ぶと思うんだ。何しろ神戸の夜景が世界一だと言われてるから、大使のご家族も満足させれば話はし易いでしょう。」
ドウです、自由な発想って素晴らしいでしょう。1950年の特級つばめには一等車が殆んどで、二両の二等車が接続されてただけの特別列車だったのさ。其の一等車両を丸々リザーブするなんて、麻布二の橋に縮こまってたオーストラリア大使館には夢物語だったのさ。
だからって此れ位の発想が有っても文句は言えないでしょう。何かと言えば羽田から木星号で飛ぶ事しか考えて無い君たちには、特級ツバメの素晴らしさを教えて挙げたいから持ち出したんだよ。何も列車オタクで無くても素晴らしい物に憧れたって好いでしょう。