「 マリーは子供から入ったので。オーストラリア大使館のご夫人達が受け入れたと思ってるのでしょう。」

   「 そうよ、功のサディスションは有ったけど、イギリスとの連合関係が強かったからアメリカの援助を受け入れたのよ。」

   「 其れが違うんだよ。アメリカの進駐が固まって居ない内に閉鎖してたオーストラリア大使館を再開したのだよ。此の意味が分かるかな。マリーはアメリカ人の考えで行くから、オーストラリアが日本に持って居る感覚を誤解してるのさ。全部とは言わないけど敵対意識は薄いんだよ。アメリカの反日感情は100年も前から燻ってたのさ。芝浦キャンプを正しく見てたら山手線の高架が新橋で途切れたのに、田町で又高架に作ったんだよ。つまり東京港の為に山手線を高架にしたのさ。」

   「 判ってるわよ、芝浦に赴任が決まった時調べたのよ。京浜工業地帯を抑えるので大師橋を閉鎖したのね。横浜からの産業道路を進駐軍専用にするのに、大師橋から浜松町までを占領したのよ。横浜側は橋で閉鎖できるでしょう。東京港口のガードを抑えれば、東京湾を抑えたのと同じに成るのね。空中偵察の地図を元にして芝浦を抑えたのよ。」


  「 判ってるのだね。其処までは好いとして、東京港口には計算外の二業地が有ったのさ。閉鎖すればドウって事は無かったのに。着物と三味線に騙されてアメリカ軍の支配地の中で生き残ったのさ。GHQの目論見では京浜工業地帯と丸の内のGHQを結ぶ幹線道路にする目論見だったのさ。視察した結果基地の中に淫売宿が公然と営業してたんだ。恐らく羽田を使う予定だったと思うのさ。ところがドッコイ、淫売宿が夜中までお客を呼び込んで居たでしょう。だからメイン道路として羽田を使うのを諦めて、晴海に飛行場を作ったのさ。此れが芝浦を閉鎖同然にしたいわくなんだ。」


   「 薄々は知ってたのよ。夜中までにぎやかな観光街が有るのはね。そうだったんだ、淫売宿だとは知らなかったわ。」

   「 知らなくても好いんだよ。元々羽田って使い勝手が悪い飛行場だったんだ。行って見れば判るけど、短い滑走路が海鳥の営巣地に成ってるのだよ。子育ての海鳥って狂ってるから人間にも襲い掛かるんだ。とても飛行機を飛ばせる安全なんか無かったんだ。加えて京浜運河は砂で埋まってるでしょう。だからキャンプは其のままにしといて、使わない占領地だったのさ。何を言うのか判るかな。」

   「 だからマリーを刑務所に送り込んだのね。」

   「 いや、もっと別の狙いが有ったのさ。ホントなら日本政府に維持費を出させれば好いのに、其れを遣ったら何百と占領してた基地が扱いにくく成るでしょう。つまり日本との共同管理になり兼ねないのさ。此れは判るでしょう。」


   「 そうか、其んな込み入った事情が有るのは知らなかったわ。」

   「 其れを知らなくても構わないのさ。晴海に飛行場を作ったから、羽田は要らなく成って芝浦キャンプに経費を掛ける許可が議会で通らなかったと思うのさ。」

   「 其の通りなのよ。アメリカ議会はソ連の進出を防ぐので目一杯だったのよ。ですから東京湾は横須賀で押さえて、横田と厚木の他には財政資金を回さなく成ったのね。習志野の飛行場も成増のキャンドレも閉鎖に持って行ったから、芝浦にはお金が落ちなく成ったのよ。」

   「 ご立派、さすがはハーバードの経済学士さんだね。」

   「 何よ持ち上げたってもうヘトヘトよ。一週間はお話タイムにしたい感じなのよ。」

   「 だったらもう一つ教えるよ。オーストラリア政府は何処にお金を使いたいのかな。決まってるね。君主国のロンドンの復興に協力するのが課題でしょう。すると敗戦国の日本の大使館に力を入れるかな。簡単に言うと芝浦キャンプと似た様な財政に成るのだよ。子供さんや夫人たちのミスボラシイ服装を見たでしょう。アメリカやフランスの大使館と比較されるから、マリーの援助に飛び付いたんだ。此処が先入観無しにオーストラリアの大使館の窮状を判らなければおかしいのさ。」


   「 そうだったのね。てっきりアメリカの援助を受け入れたものと思ってたわ。」

   「 まるで違うんだよ。マリーはアメリカ人の感覚と、お金のルーズさにカマケテ真実を見様とし無かったのさ。僕が狙いはオーストラリアだって言うのはお金から入ったからなのさ。最初から分かってたんだ。

        マリーの除隊で取り残された犯罪集団

        は、アメリカ軍事法律のミスなのはね

彼等が居なく成れば全部帳消しなんだよ。ではどうするかって、養魚池の鯉が逃げるのとは違うけど、海に行って呉れれば全部終わりなんだ。アメリカ軍人なら此の理屈が判るでしょう。彼らを海に帰すのには荒い手を使ったってアメリカは見てるだけなんだよ。軍法を自ら破ったんだ。もう消えるのを待つばかりなのさ。」


   「 そうか、マリーが甘かったわ。するとタバコの抜き取りも知ってたって事なのね。」

   「 恐らくね。此れはマリーとの関係も無視できないと思うのさ。陰にはハーバードが光ってるでしょう。そっとしといて無事に除隊して呉れれば全部丸く収まるのさ。恐らく僕の存在も知られてると思うのさ。あの10人は、もう消えてる物で処理してる筈なのさ。記録を残したら責任問題に成るでしょう。だったら自由に泳がせて置いてマリーはオーストラリア大使館のマダム連中と遊んでれば好いのさ。其れで遣って呉れるね。」

   言っちゃったよ。何れは言わねばとは想ってたさ。多摩川河岸の小屋は拾い物だったんだ。此処だったら素直に話せると思ったのさ。マダマダ狙いはとば口だけど、オーストラリアが乗って来る下地は出来たんだ。後は貨物船をドウするかなんだよ。皆んな朝鮮動乱の儲けに目が眩んでるのさ。一気に萎んだ反動に気が付いて居ないんだ。

       其れこそ出たとこ勝負に成るだろうけど

僕の得意技の

       的は一つに絞っといて

素早い身の変わりを見てろって言いたいのさ。