良く血の繋がりを仰る方が居らっしゃいますのね。苦楽を共にしたのを繋がりに仰いますが、其れも有るやに思って居ますのよ。
過酷な戦場で共に戦った戦友が、飲み屋でのお友達だとは申しませんわ。母と私の繋がりって、一つだけ言わせて貰いますと
今日も来て呉れたのね
が、何よりも強い繋がりだった様に思いますのよ。
8歳の時だったと思いますの。南千住の操車場の壊れた貨車に連れて行って下さいましたのよ。
ホントに無口な母でしたの。何も言いませんでしたが明日は迎えに来るからねでしたのよ。ただ其れを待つ娘でしたの。
其の時からお迎えに来ないのが別れなのは知って居ましたのね。不思議でもなんでも無かったのですのよ。其れが母との繋がりの全てでしたの。最後は千住警察の死体置き場で、冷たく成った母に別れたのが終わりでしたのよ。父と並んで台の上に裸で置かれて居ましたのに、何の感慨も御座いませんでしたの。父は他人事に思えましたし、母とは
来るべき時が来たとしか思いません
でしたの
綺麗な体でしたのよ。両手首に巻かれた包帯は、聖心の2年の終わりにお墓をお参りさせて下さった弥太郎さんに教えられて思い出しましたの。
人にはお墓の中に持って行く秘めた想いも有りますでしょう。一言も申しませんでしたが、母には秘めた父との馴れ行きが有ったのは心得て居ましたのよ。ですから二人並んで冷たく成って居たのは、
ヤッパリね。此れで終わったのね
しか、想わ無かったのですのよ。申し訳有りませんの。母との17年を諄いほどお話ししましたのは、
何時かはとの想いは、母も娘も持って
居た17年なのをお話ししたかったの
です
ホントに平凡な母と娘でしたのよ。今思えば其の平凡の全てが母の別れの言葉でしたのね。
独りに成って生きて行くのに必要な
全てを、それと無く暮らしの中で
教えて呉れて居たのですのね
何故、操車場の廃貨車を選んだのかなんですのね。雨風が凌げる家こそが女には必要なんですのよ。皆様軽くお考えでしょうが、女には屋根のある家が必要なのですのよ。
次にお金なんですのね。お金って溜める物では無いのを現実の中から教えて呉れて居たのでしたの。
やっと気が付きましたのよ。溜めるって
無駄な努力なんですのね。何の意味も
無い処か、其れが心を歪める元に成る
のですのよ
生きて行くのに一枚のお札が必要なのを教え続けましたのよ。朝、お弁当は持って来て呉れましたのに、お金を持って居るのを見た事は無かったのですのよ。それと無くお金を教えて居たのですのよ。此れが今でも珠樹の原点なんですのよ。