「 ウエポン1輌では手緩いのじゃ無いかしら。星条旗を掲げたら効くでしょう。」
「 なにをお惚けなんだい。スターズ&スプライプスってアメリカ政府なんだよ。ウェポンは進駐軍の象徴なんだ。アメリカ政府の代表はアメリカ大使なんだよ。進駐軍の代表はマリーなんだ。
無条件降伏したんだから、占領軍が絶対
権力を持ってるのが今の日本なんだよ
伊達に星条旗を掲げたら、アメリカ大使が飛んで来るよ。ウェポンだから進駐軍なんだ。其れで十分なのが判らないのかい。」
言っちゃったんだ。マリーは混乱してるのさ。進駐軍と黒い肌と、船乗り上がりの10人のならず者にね。僕と競馬に熱中して呉れないと困るのさ。
競馬って道具なんだよ。競馬場の中のばくちは質屋連合に任せとけば好いんだ。僕は場外で胴元で稼ぐのが仕事なんだよ。何も川崎競馬の胴元で満足してるのとは違うのさ。質屋連合の理事さん達が、中央競馬に顔を突っ込みたいからそっちの胴元も請けてるだけなのさ。自然に東京と中山のノミ屋組織にも加わる結果には成ってるけどね。
其処ん処をシッカリ区別して呉れないと困るのさ。所が大事件に発展しちゃったのさ。
春の天皇賞の中止を農林省が打ち出
したのさ。サラブレットが不足してトレー
ニングがまま為らないので、東京の
サラブレットを栗東のトレセンに集める
って言い出したのさ。
さあ、収まらないのが中央競馬会の理事さん達なんだ。
東京競馬の天皇賞レースは競馬の為
に有るのでは無い。イギリス皇室の
要請で作った天皇賞レースなんだ
イギリス王室を無下にするのかって、事を荒立て始めたのさ。イギリス大使館も黙っては居ないよ。
天皇賞レースを遣らないのなら、ダー
ビーも菊花賞もセントライト記念も中止
だって
横やりが入ったのさ。セントライト記念って、日本初の三冠馬って言われてたんだよ。イギリスから持って来たサラブレットだったのさ。今の競馬ファンは知らないらしいけど、イギリスに取ってはセントライト記念は最重要なレースだったのさ。
中央競馬会の理事さん達は、農林省にねじ込んだんだ。
競馬云々では無いのさ。天皇賞を何と
心得てるのだ。若し中止するのなら
大相撲の天皇賜杯も中止
させるってね。怒ったのは相撲協会だけでは無かったのさ。岸記念館に陣取ってた
日本スポーツ連盟も騒ぎ出したから
騒ぎは収まらなく成ったのさ。寄ってタカって天皇賞レースを大問題に持ち上げちゃったんだ。
今度は秋の京都競馬の天皇賞レースの開催に話は飛んだのさ。春までもめ続けて、結局栗東のトレセンに話が及んだのさ。何しろサラブレットの不足が決定的に成ったんだ。取り敢えずの不足を計算したら300頭~400頭の補充が必要と弾き出したのさ。
「 サラブレットってアメリカでは余ってるのよ。持って来たら好いのじゃ無いかしら。」
「 簡単に行って呉れるね。時差の有るアメリカから持って来ても、動物が慣れるのに何ヶ月も掛かるのだよ。船で運べるのは数十頭に絞られるんだ。生きてたとしても時差を克服するのは難しいね。」
「 だったら時差の無い処から持って来れば好いでしょう。」
「 何も知らないんだね。動物を持って来ても検疫を済まさなければ日本国内には持ち込めないのさ。少なくても1ヵ月の隔離が必要なんだ。毎日の調教が必要なサラブレットを1ヵ月も隔離したら、レースに使えなく成るのだよ。此ればっかりは進駐軍の権力でもドウ仕様も無いのさ。」
しょぼくれてるマリーを元気づけるのには、
ヘベレケに飲ませるかヤルしか無いの
だよ
ドッチを選んだのかって、君だったらドウするね。
決まり事を言うな、ドンペリで酔い潰れ
たって
何も知らないのだね。ドンペリの空き瓶は酒屋で引き取るのだよ。詰め替えてクラブに卸すのさ。
なーに、王栓だってチャンと作る業者も有るのだよ。知らないで呑んでるのって焼酎の水割りなんだ。銀座で出るドンペリのナンパーが本物なのか知ってるのかい。まあ好いさ、君の好きにしたらね。