「 僕の学校はマリーだったのさ。セックスの先生じゃあ無いよ。お互いに初めてだったから自然に交わって自然に覚えたのさ。」
「 交わるは無いでしょう。もっと他の言い方にしてよ。」
「 ホントだったのさ。格闘してる内にコンガラカッチャッタだけなんだよ。今思えば男と女の激流が其うさせたと思うのさ。勉強って本を読むのを教えられたのさ。辞書を引くのを覚えたら、我武者羅に活字に滅入り込んで行ったんだ。マリーが教えて呉れるのは主にハーバードの社会科の知識だったね。其の中にもニガーの心のモヤモヤを教えるとも無く愚痴ったのさ。其れを聞き流すのと、セックスって行動に繋がるのに頭の中で分けたんだ。つまり、単なるモヤモヤと決着を付けなければ成らないグチがセックスに結び付くのを知ったのさ。
マリーの心の中を曝け出すのだが、単に
感情だけなら聞き流せば好いのさ
深刻な心の傷には二人でセックスする結果に成るのだよ。ヘンな言い方だけど、聞き流せない問題って幾つも無いのだね。あの時26だったマリーが引きずって来た感情は捨てては置けなかったんだ。此れを言うのは10人が17年の感情の中には、拘らないで捨てなければ成らない心も有るのだよ。」
何とも僕の話をバカにした顔をしたのさ。
温泉宿とは言えない寂れたホテルだったよ。袋田の滝から思い切って北に向かったんだ。幾らなんでも猪苗代まで行く気は無かったのさ。福島は観光の立ち上げが遅れて居たから、洋式の水洗やバス・ベッドが備わって居る温泉地は
東山温泉位って聞いてたから
袋田の滝の全面凍結を見せたら南に戻ろうと思ってたのさ。2週間の休みが取れそうだったので北の山岳温泉を探して見様としたのさ。
「 悪かったね。福島の山歩きの疲れを癒す山の温泉が有るって聞いてたので探して見たのさ。此れでは温泉宿とは言えないね。明日は鬼怒川か草津に戻ろうよ。」
「 好いのよ。お布団を並べてお話しするのには具合が好いって感じでしょう。今夜は火鉢が有るから日本酒を貰って飲み明かしましょう。」
に成ったのさ。布団をずらして火鉢を囲む様にしてお酒をチビチビ飲み明かしたんだ。
「 何時か話そうと思ってたんだが、柳橋の女将さんで思い出したことを話して置きたいのさ。」
「 好いわ、聴きましょう。」
で、思い掛けない昔から話したのさ。実は人の寿命の事だったんだ。此んな機会で無ければ話す事では無かったんだ。18歳の山田は
青春真っ盛りなんだ。人の死は知って
居ても、寿命に追われて居るなんて
意識の中には無いのだよ
何とも東京に居たのでは思わない、寂れた山の中の木賃宿だかから話して置こうと思ったのさ。