個人営業のガイドさんが尋ねて居らっしゃいましたのよ。ご家族をお連れに成ってね。

   「 アレから寝ずに話し合いました。奥様が仰る通りです。子供中心に考えるのが大事だと気が着きました。今日は家族全員で来ましたがお許しください。」

    全部日本語でしたのよ。チャンポンはお止めに成って直訴のお考えの様でしたの。彼が窘めましたのよ。

    「 チョット待て、家内の気を引く心算の様だが考えが浅いな。スペイン語はカラッキシだが、カンの好いのを見くびると大火傷をするぞ。イングリッシュもアメリカンにも精通して居るから、スパニッシュもフレンチも組み立ては同じなのを知って居るのさ。ご夫人にも判る様に話したら好いんだ。こっちの条件を言うぞ。先ずテント暮らしは出来ないとな。第二にカタルーニャの散策から始めて貰いたい。第三に温泉が望みなんだ。此れは家内の条件なんだ。ワシの条件は経費は全面的に受け入れるとな。此れが飲めるかを聞きたいのさ。」

    ドウやら予想外の展開の様でしたのよ。奥方と相談為さって居るので、子供さんの気を引いてロビーから広場が見渡せるディナールームに誘いましたの。自信は有りましたのよ。ヒト懐かしさを見せるのにはね。日本では其うでしたが、スペインでだって人怖じし無いのが子供に通じるのは研究済みでしたのよ。案の定、ホテルの探検には着いて来ましたのよ。手真似とスキンシップで笑顔を呼び出しましたの。日本の女に興味が有るでしょうを利用してね。黒髪を解いてお化けの真似が受けましたので、頬にチューしちゃいましたの。真っ赤な顔が愛らしかったこと。彼が呼びに来なかったらかなりの線まで行ってたと思いましたのよ。


    「 此処だと思ったぞ。決まったぞ、ルートは北に伸ばして国境沿いに変更だ。何ヶ所か温泉が有るそうだから、予約が取れる限りは2週間で本線でバルセロナに帰る予定で行く事にしたのだ。奥方の休暇は2週が限度だそうだから、子供さんと家で待つそうだ。」

    「 待ってよ、マドリードから支局のお人が同行するって言ってたでしょう。私一人女では心細いのよ。奥様がご一緒して下さるのなら、全部OKにしましょう。」

    「 おいおい、子供を実家に預けるのは出来ないそうなんだ。かなり厳しい事に成ってる様なのさ。其の線も提案して見たが、まさか子供連れでの山登りはって事に成ったのだ。支局に連絡して、前に来て居た婦人を呼べば好いだろう。」


   「 何もお判りに成って居ないのね。お泊りは兎も角としても温泉なんですのよ。何方様がお入りかは存じませんが、珠樹一人で温泉に入れとでもお考えなんですのね。でしたら行くのは諦めますのよ。見てお判りでしょう。此の子とだったらお風呂に入るのは出来ると思いますのよ。お母様とご一緒でしたら、何も問題には成りませんでしょう。」

   全部遣り直しに成りましたのよ。もう好いの。お子様を拉致してエレベーター遊びから全館の探検をしましたのよ。お部屋に連れ込んでプレゼントの攻撃で落としましたの。

        バスに誘おうとも思いましたが

いくら何でも其処までの度胸は有りませんでしたのよ。


   「 決まったぞ。支局のガードは、行く先のホテルで待つ事にしたのだ。其の点も了解を取ったから、此れから装備を仕入れに行くのに決まったぞ。ジロナにはホーキンズのアウトドアショップが有るそうだから、お前の好きなジャック・ウルフスキンも手に入るかも知れないぞ。」

   まさかと思いましたのに、遠く離れたジロナでジャック・ウルフスキンが手に入るとは思いませんでしたのよ。欲しかったお飾りの少ないジャケットも手に入りましたし、もう夢中でお買い物しましたのよ。靴だってホーキンスを何足も求めましたの。お子様のも奥様にも強制して、珠樹と同じに揃えて貰いましたの。此んなにお買い物に夢中に成ったのって、日本を出てから初めてでしたのよ。もうダメ、ジャック・ウルフスキンも奥様と子供さんにもお揃いで求めて頂いて、踊りっ放なしでしたのよ。呆れて見てる彼にはお構いなしで、三人のタッグで余分なお買い物をしちゃいましたの。