「 登山ガイドが無責任だと仰ったのは貴男なのよ。複数のガイドさんにお願いするって仰ったでしょう。向こうのガイドさんだけでは何か有ったら面倒は解決できないでしょう。」
日本語が通じるのですから、こちらの内情をそれと無く教えちゃいましたのよ。
「 無理を言うなよ。其れでは此のジロナで登山は出来ないぞ。」
阿吽の呼吸までとは申しませんが、かなり気が合う様に成りましたのよ。
だって素直に諦めない珠樹をご存じなんですもの。難しい交渉が始まりましたの。
「 シチリヤで1600メーターのプサンプラ山に登った経験が有ります。山小屋に泊り掛けの1週間でした。地図を見たらカタルーニャの丘はかなりの広がりが有る様ですので、期限を切らずに山歩きをしたいのです。バルセロナのレイ・ファン・カルロスは年末まで契約して居ますので、ホームグラウンドとして来年も契約する心算です。シチリヤのタオルミーナは土地の建築会社が投資の見返りとして留守を守って呉れて居ます。ヨーロッパに長期滞在するのに多少の投資は必要なのです。此処のペニンシュラの契約も、レイ・ファン・カルロスを通して結んで居ます。多少ともジロナの繁栄に成るのでしたら滞在の間にカタルーニャの丘と山を知りたいと思って居るのです。彼女は岩崎珠樹に成って居ますが、ミセス珠樹ですから家内と思って下さい。」
回りくどいのってイライラして来ますのよ。
「 此処には手ぶらで来ましたのよ。観光でも日帰りのお散歩でも有りませんのよ。カタルーニャの平原の散策から始めて、出来たら山登りをしたいのです。此の人はテント暮らしに成るかもって言いますが、出来れば山小屋でも好いのですが、チャンと屋根の下で夜を過ごしてカタルーニャを歩きたいのです。観光をしたく無いのです。健康で有ればって思って居るのです。もっとハッキリ言うと、バルセロナに長く居ると、パルのお世話に成るでしょう。お酒が切れませんのでお酒が無い時間を過ごしたいのです。私ってかなりの飲んベーですから、バルセロナから離れる時間を作りたいのです。」
云っちゃいましたのよ。もう本音を明かすのが手っ取り早いと感じましたのよ。其うで無くても歳の差が明らかな夫婦なんですもの。下手な説得が効かない位は判って居ましたのよ。