「 今朝行った協会には、観光案内所から連絡が入って居なかったと思うのさ。観光案内所でビザの提出を求められただろう。一概には言えないが、普通はホテルのフロントが預かる物なのさ。あゝした機関ではビザを預かるホテルは調べて有る物なのさ。チャントしたホテルだとビザの提出も求めるから、其れだけで滞在して居るホテルが判る仕組みに成ってるのさ。」

    日本語って便利なんですのよ。母音が多いので鳥の囀りに聞こえるのですって。少し早めに尋ねたのに、子供さんをあやしながらお店を開いて居たでしょう。珠樹にだってチョット不思議でしたのよ。


    「 昼前だったから前の観光協会に確実な連絡が入って居なかったとも思えるのさ。電話を取った従業員が忘れたのかも知れないな。其れに引き替え此の協会には連絡が入って居たと知るべきなのさ。」

    笑いながらの日本語の会話なんですのよ。無駄話が普通に思える様に話しましたの。ところがアッサリ、

        仰る通りです。観光案内所から連絡を

        受けて居ました。早めにと思いました

        ので店を開けてお待ちして居ました

癖が無い日本語で言われましたの。此れには彼もビックリでしたのよ。


    立ち直るのは早かったのです。

    「 では、ペニンシュラに泊まって居るのはご存知ですね。確かにパスポートとビザはペニンシュラに置いて来ました。ビザはイタリヤ発行の観光ビザに成って居ます。パスポートにはシチリヤ政庁の入国スタンプとモロッコ政庁の出入国のスタンプが押して有ります。スペイン入国はマラガの空港で捺して貰いました。イタリヤの観光ビザは期限が切れて居ますので無効なんです。其れに代わる此れがシチリヤ滞在の許可証です。此れは身分証とも言える物ですから、ペニンシュラでは見せただけなんです。ビザは此の通り持って居ます。此れでお判りでしょう。正式にはイタリア出国の許可は受けて居ませんが、シチリヤ滞在が今も資格と成って居るのです。」

    ヤヤコシクテ判りませんでしたのよ。


    ガイド協会のご主人がニッコリ為さいました。

    「 其れで判りました。スペインでは入国審査が厳しいのです。確かにマラガの空港では入国を認めましたが、協定が有るシチリヤ滞在の証明書をお持ちでしたら、タオルミーナの住民として認めたからなのです。わが国ではビザは要りません。どうぞ長くご滞在に成られても不振を持たれる事は無いのです。前の戦争に加わらなかった特権として、シチリヤとは協定が結ばれて居るのです。私は東京で生まれましたが、日本の参戦と同時に此処に戻って来たのです。岩崎様のご身分も承知して居ます。あっ、家内が戻って来ました。子供は適いに戻します。」


    「 いや、ご丁寧に恐縮しました。」

彼がシドロモドロに成りましたのよ。奥様が美人なんですもの。今度はご夫婦のスペイン語の会話を通訳して呉れましたの。

    「 日本語は一方通行らしいのさ。ドウやらご実家に子供さんを預けるのが難しい様なんだ。ガイドは引き受けられないって話なんだ。此れは難題だぞ。子供さんの問題が複雑に成って居る様なんだ。諦めるしか無いだろう。」

    其う単純には納得出来ませんでしたのよ。