「 下水処理って其んなにお金が懸かるの。おかしいとは思ってたのよ。此処の前の道路の溝だって蓋を被せて無い所が多いでしょう。此れでは臭い汚水なんか流せないでしょう。」

    軽く一戦が終わった所で話したのさ。温泉ったって名ばかりなんだ。沸かし湯も入れ替えて無いから臭くて入る気にも成らないのさ。だからサッサと逃げ出そうと思ってたのに、神明町のオヤジさんが来たでしょう。狙いなんかトオにお見通しさ。オリンピックのバブルを嫌ったら仕事にアブレルに決まってるでしょう。老舗が没落して行くパターンなんだよ。早い話で仕事に好きも嫌いも無いのだよ。

        何が職人気質なのさ。一人で粋がって

        るのなら構わないけど、多くの人の

        仕事を確保して行くってのは、気取って

        たらアリ地獄に落ちてから気が着いて

        もって

言って遣りたかったのさ。


    「 ふふっ、ドウやら思い余ってる見たいね。お注射の勢いが無い事。おイヤなら明日東京に戻って帰って来なければ好いのよ。」

    「 其うは行かないよ。普通は此れからの付き合いも有る事で逃げるけど、僕の流儀には逃げるってのは無いのだよ。おや、逃げる心算なのね。娘さんがまだだって言ってるよ。」

    再チャレンジを軽く済ませたのさ。狼まで行ったら日本家屋は拙いんだよ。だからって隣で寝てる親方にはチャンと届く程度の悲鳴は上げて貰ったよ。


    「 恐らく雪が降るまでに一か月は無い筈なんだ。建築の手順は知らないけど、お風呂のお湯が腐っては入れないのは一番の難問なんだよ。だから排水処理を遣るのが先なんだ。」

    「 側溝を拡げるって言ってたでしょう。2キロ作るのに1ヶ月ではーーー」

    「 1ヶ月有れば十分なのさ。2キロを10か20に区切って出来高払いにするのさ。金沢って多くの産業は京都の職人を入れて作って来たらしいんだ。だったら条件を高く設定して、金沢の外の業者を入れれば好いのさ。金沢家訓は知らないけど、其うして産業を盛り立てて来たのでしょう。金沢家訓を市のお役人に突き付けて遣れば好いのさ。

        今のままだとオリンピックに

        乗り遅れますよ

ってね。」


    隣の部屋で息を殺して伺ってる親方に教えたのさ。気の毒だけど若者の特訓って目も耳もチンポも感度抜群なんだよ。ヒソヒソ声だって聞こえちゃうんだ。皆んなは其れを直ぐ言うけど、僕は知らん顔の特技を使ってアホを装ってるのさ。

    「 何をお考えなのか気が着かないと思ってるのね。40年のご無沙汰はお脳だって指先だって処女に戻ってるのですからね。」

    そりゃ堪らないよ。僕の急所を知り尽くしてるから、柔らかい指が這って来たら止まらなく成っちゃうんだ。判らんお人だね。一ヵ所だけは教えて挙げるけど、

        袋の裏側―――おっとっと、其処は

        セカンド感度が鈍い所なんだよ。一番

はって、自分で研究してご覧。