芸者も好きなら珠樹も好きよ。もっと好きなのは彼、弥太郎さんなの。6年も毎晩高輪の大きなベッドで温めて下さって居たのですもの。

     最初の1年は、大きな壁の様なお背なを珠樹に向けて、平気で寝言とおならを浴びせられましたのよ。1年で判る様に成ったのですもの。おならってディナーが其のまま響いて来るのですのよ。夕方柳橋の置屋さんに迎えに来て下さるでしょう。お風呂は聖心から帰るとお母さんとご一緒でしょう。お母さんのお料理の邪魔をしながら、スッポンポンでおいたをし捲りますのよ。

   

    もう、判って居らっしゃいますからバスタオルをお腰代わりに巻いて珠樹とおふざけなんですのよ。お判りですから珠樹がお摘みするデザート紛いのお料理も作って下さいますのよ。最初は手を叩かれましたのに、何時の間にか珠樹のお口から取り上げられて召し上がって仕舞うんですのよ。

    「 味見よ、誰かに見られたら―――」

って、旦那に先立たれたお二人のお姉さまがご一緒にお暮らしなんですもの。会所の顔見せにお出掛けに成った好きに、つまみ食いをするのですのよ。ヤー様の夕ご飯とお二人のお姉さまの分と5人前のお料理なんですのよ。其の日によって出前が入る時も有りますけど、珠樹にお台所のホントを教えて下さって居たのでしたの。


    「 主婦業って手順が大事なのよ。仕出し屋さんの厨房とは違うのですから、後のお掃除も計算しながら、汚れ物を増やさない様にするのがお利巧なのよ。女の手はお湯を使うと荒れやすいのよ。此のお台所にはGE製のオッシュディッシャーが備えて有るでしょう。此れをフル活用するのよ。」

    ボイラーからお湯が出る様に成ってますのよ。

    「 好い事、クラブ化粧品のハンドクリームを塗って置くのよ。汚れ物はお湯で適当に流して触らない様にしてオッシャーに放り込むのよ。此れって業務用なんですからきれいに落として仕舞うでしょう。落ちないのはご飯粒だけなんですから、お茶碗はお湯に浸して朝まで浸して置くのよ。お判り?朝のお茶碗はお昼や晩御飯とは違う物を使うのよ。男衆には其れが仕来たりだって呑み込ませるのも大事なのよ。」


    そうなのよ。手抜きの見本見たいなんですのよ。ですからお母さんの手って、私の手よりも未だお若いのよ。あら、

       お手だけでは無いのですのよ。何処が

       ってお教えする訳には行きませんのに

珠樹のバディーシャンプーで、上気為さったお肌の白さって負けますのよ。お山の張りだって――――

好いでしょう。とても68には見えませんでしたのよ。17の珠樹は孫なんですのに、いやーね、主婦業を申して居ますのよ。お母さんと言うよりはお姉さまでしたのよ。

       内緒なんですけど、大きいのの始末も

       後ろから手を廻して懐紙を使うのを

       教わりましたのよ。

だって新聞紙を揉んで使って居ましたのよ。聖心を脱走して広尾の甘味処に集団攻撃しましても、お便所―――其うなんですのよ。汲み取り式のお尻をタイミング良く持ち上げませんと、お釣りが跳ね帰って来るおトイレでしたのよ。木の箱に小さく切った新聞紙が入って居ますのを、揉んで使いませんと珠樹の観音様が悲鳴を挙げるでしょう。あら、

       失礼を申し上げてお許しくださいな。

此れって主婦業とは違いますでしょう。女修行のクダリなんですけど、其れさえも知らなかった17歳をお話ししたのですのよ。