サグラダ・ファミリアの行列に並びましたのよ。100人を超す行列の中でも彼は頭一つ抜け出して居ますので、昨日お会いした方が語り掛けて来ましたのよ。スペインの言葉は幾つかの単語しか判りませんでしたが、彼の受け答えが自信を持ってのお返事なのは判りますのよ。
「 皆んなお前を褒めてるのだぞ。若いのにってな。」
「 感じましたのよ。お褒めに成ってるのは貴男なんですのよ。皆様貴男に話し掛けて来るでしょう。スペインを良くご存じなのは判って居ますって何ですのよ。羨ましいってですので、お傍を離れませんのよ。」
OKが判る様に成ったのですもの。これ程嬉しいのって無かったのですのよ。陰に隠れなくても手を繋いでも好いって。
暗い階段をゆっくり上りましたの。珠樹に併せる一段ずつのお運びなんですのよ。だって大きい彼がチョコチョコと一段ずつ登るのですもの。嬉しいのが止りませんので踊り場で皆様を遣り過ごしたら、抱き上げて下さったのですのよ。壁に背を凭れて長いキスで砕けそうになるのって、もう――――
「 固く成るな。芸者珠樹は宿に置いて来たと思うんだ。」
ダメなんて言えないでしょう。
落第も好いとこなんですのよ。彼のハンカチで珠樹の口を拭いて下さいますでしょう。だって大きな肩にしがみ付いて居るのが精一杯でしたのよ。右手は珠樹の腰を支えて居るでしょう。左の腕はガッチリ抱き寄せたままなんですもの。もうデートを装うのに夢中でしたのよ。
「 思い出したんだ。大学の柔道の組み手をな。サボるのが多かったのだが、ワシが一番のノッポだったから。組むのだけは誰れにも負けなかったな。」
レイ・フアン・カルロスのディナーの席でお笑いに成りましたのよ。大学のお話は一度も為さいませんでしたのに、思い出したのが余程のお心だったのでしょう。すっかりリラックス為さって、椅子から落ちそうに反り返ってお笑いに成ったのですもの。半分は珠樹の固いのを解そうと為さるのが判りますのよ。二人の世界がディナールームにも有りましたのよ。芸者珠樹が逢わせるなんて何處かに行って仕舞ったのですもの。
「 そうだ、思い出したぞ。確か犬飼って奴だったな。大外刈りを掛けたら腕を骨折してな。母親が付き添っていたのだが、其のママコンが道に入ってたので皆んなで大笑いしたんだ。奴はドウ成ったのかな。日本に還ったら会うのも愉快かも知れないな。」
初めて話し相手が出来たってお笑いでしたのよ。何度かは伺った話なんですのよ。柳橋のお母さんに聞かされて居たのですのよ。少しは並んだ気に成ったのですもの。彼も芸者珠樹をお認めに成ったのもね。