「 僕は兄弟が多かったので、自然に家に居られ無く成ったんだ。家は羽田の穴守稲荷の傍の漁師町だったのさ。大師橋の上で多摩川河岸の野犬が群れて、サラブレットを脅してるのを見てたのさ。直ぐ傍の東京港は進駐軍に接収されて居たんだ。あの辺は遠浅なんで100メーター沖に堤防を作って貨物船が通れる運河にしてたのさ。其処は格好のプールに成ってたので、夜中に泳いで芝浦埠頭に忍び込んでたんだ。ジープからラジオを盗んで進駐軍の極東放送を聞いてたのさ。言葉って言っても南部の訛りが酷いアメリカンが切っ掛けに成って、捕まった司令官のマリーとネンゴロに成ったんだ。其れから2年一緒に暮らして日本の漢字やハーバードの勉強を教わったんだ。確かに川崎競馬のノミ屋の総元締めは遣ってたよ。男ってのは、一生物の仕事とセックスが有れば満足する動物なんだね。珠樹に聞いたんだが、弥太郎さんは其の二つを絶たれたのか、自分で止めちゃったのかは知らないけど、僕とは違うヘンテコリンな生き方をしてた人だと思うのさ。」


    「 そうね、男は其れで好いかも知れないのね。女の区切りって一つには妊娠なのね。私の経験では6か月までしか知らなかったのよ。妊娠を知った時ってまるで他人事の様に思い込もうとしたのよ。ドウ言う訳かつわりも何も知らないままに堕ろされたから、女の人が妊娠で10か月も苦しむのって想像が着かないのよ。ですから妊娠の苦労を区切りにするのって判らないのよ。それと無く聞いたら、殆どの女性が二度と妊娠は嫌だって言うのね。ですから子供に愛情を感じるってのは作り事に思えるのよ。妊娠が女性の区切りと思うのよりは、その後の子育てに重荷を感じるのが正直な思いに感じるのよ。」


    「 そうか、僕には良く判らないけど、遊び歩いた経験では、セックスを其の時嫌う人は知らないんだ。終わった後ではいろいろ思うけど、其の時は二人だけの世界に成るから、セックス程真剣に取り組める物は無いと思ってるのさ。」

    「 そうよ、珠樹が向こう柳原の土手で暮らしてた貴男にお弁当を届けたのは、若い男に憧れてたのにして置きましょう。あの時の珠樹と同じ歳の芸者で、セックスが無い弥太郎さんにお仕えし無ければって悩みは良く判るのよ。弥太郎さんは学生でしたけど、殆どの芸者衆はセックスが無いお年寄りの慰め者にされるのね。私は坊やで爆発したけど、家に籍を置いてる5人の衆も、セックス抜きの体のやりどころが無い苦しみが有った筈なのよ。皆さんもう40過ぎですけど、まだ若いとも言えるのね。ヤー様は珠樹で封印を解かれた様ですけど、私を入れて6人は坊やに満足したいって思ってるのよ。皆んな旦那の借家住まいで我慢してたけど、出来たら家を持って家庭を作って行って欲しいのよ。先ず私が真っ先にお手本に成ろうって思ってるのよ。」

    やっと大筋が見えて来たのさ。