芸者って珠樹の為に有るのですのよ。ヤー様は
芸者珠樹よりも岩崎珠樹をお望み
なんですのよ
日本に居たら、相続ですとか諸々の面倒は避けられませんのね。先ずお二人の執事が何やかやとお申し付けに成るでしょう。奥様の影も色濃く残って居ますから。高輪に留まって居らっしゃる畠山にお仕えに成って居た皆様方の問題だけでは無いのですのよ。盆暮れの煩わしさだけでは済まない問題も数多く有りますのよ。ヤー様が若い珠樹をご自慢に成られても、様々な軋轢は避け様が無いのですのよ。
外国に居れば其れの関わりは変わって来て居ますのよ。珠樹は更に複雑なんですのよ。仮に日本に戻れば今の様に女性が彼とねんごろに成るのは問題に成りますのよ。周囲の目だけでは無いのですもの。
其れを許して置く珠樹も責められますと
同時に、珠樹の心も穏やかでは無い
のですのよ。
バレンシアに居るからこそ、浮気だとかお遊びだとかとは違う男女の関係がまともだとしても可笑しくは無いのですのよ。正直言いまして一時の浮気では済まない真剣が有ると感じて居ますのよ。
つまり、バレンシアだからこそ彼の姿がフット消えても、スペインのすれ違いで珠樹の心を誤魔化せますのよ。日本でしたら男性の浮気を許すのなんて女としては落第だと申されますでしょうね。
かたわな女だからって、憐れみよりも
女の資格其の物を疑われるでしょうね
スペインでしたらハグやキスは握手と同程度に見られるのですもの。此れがイタリアでしたら、女性に声を掛けるのが礼儀だとされて居るのですのよ。彼も其れと同じに心を開いて貰いたいと思いますのよ。其れが珠樹の嫉妬も暗く成るのが防げるのですのよ。
だって嫉妬を感じたのって初めてでしたのよ。いーえ、女ですもの。あらゆる物に嫉妬は持って居ましたのよ。人様の指のリングにも嫉妬は有りますし、柳橋のお母さんにも言うに云われぬ悩みと申しますか、やっかみの心は有りましたのよ。珠樹って狭い心の女なんですのよ。昨日は何気なく見過ごして来たお母さんのお歩きに成る姿にも妬けるのですのよ。其れが真似が出来ない悔しさって心にうっとおしい想いで残るのですのよ。正直に言ってご免なさい。自分より優れているすべてにジェラシーを感じるのですのよ。其れが外国に居ますと全てがウソの世界として珠樹の心を騙せるのですのよ。
早い話がパリジェンヌも一時のお慰めだとして彼の本気を考えない様に出来るのですもの。一瞬は思いますのよ。あのおチンチンを呑み込んだパリの女の誇らしげな顔をね。
でも珠樹の心も体も芸者なんですから
って、諦めるよりもヤー様にカラットのダイヤがおねだり出来る芸者珠樹に切り替えられるのですのよ。
其の時ばかりは芸者を珠樹の有利に
成る様に使える誇りが嫉妬を上回り
ますのよ。此れが入籍して居ましたら甘えるのがみっともなく思うでしょうね。
岩崎夫人なんですから、常に威厳を
失わないで振る舞うのが
に成ると思いますのよ。芸者の目の前には彼の亀さんが居るのと同時に、甘えておねだりする特権も持って居るって決めて居ますのよ。なんとも可笑しくても構いませんのよ。芸者珠樹って彼がお求めに成ったお人形だと決めて居ますので、都合が好い様に女と娘と赤ちゃんを使い分けて居るのですもの。此の楽しみって彼には無いのですから、しばしの摘まみ食いにも目を瞑れる珠樹なんですのよ。此んな都合が好い芸者を、チョットやソットでは手放す物ですか。