「 マリーも家庭を知らないでょう。違うんだよ。チャントした普通の暮らしを言ってるのさ。僕の事を言うけど、戸田の小屋である程度の料理や洗濯や掃除はしてるけど、此れって家庭とは言えないでしょう。別に犬を飼ったり花を飾ったりするのが家庭だとは言わないよ。誰れも来ないと裸に成って寝転んでても、お客が来るとチャンと服を着るでしょう。其れが家庭なんだよ。」
「 悪かったわね。マリーだって其うしてますのよ。根津ではかなりリラックスしてる心算なのよ。今は家庭を作ってる心算なのよ。」
「 其れを言ってるのじゃ無いのだよ。将来を言いたくは無いけど、実家を娘たちにも教えとくのを言ってるのだよ。あの子達は此れから家庭を作って行くんだ。其れに戸惑ってる面も有るのを知って欲しいんだよ。僕は娘たちには異性だから、あの子達の家庭には踏み込めないのさ。判って欲しいんだけど、あの子達の家庭は僕を外してって、―――僕はお客の立場なんだよ。マリーも其の感じは有るとしても、今だったら母親と娘の関係位には接近できる筈なんだよ。何だかヤヤコシク成っちゃったけど、関係がドウって言わないで、少し接近して欲しいんだ。ハーバードを呼ぶのも好いけど、連れてくのも接近には成ると思うのさ。」
此処まで言う必要は無いって言うのでしょう。娘たちの頑ななのを知ってるから言うのだよ。マリーとはもう3年近く一緒に暮らしてたんだ。何が違うのかって言うと、
家庭を作って来なかったのが、関係に
不足してたのさ。裸に成って一緒に
ジャレてる様に見えても其れは共同
生活の合宿の慣れだったのさ。
皆んな気が着かないで来たけど、離れた僕が気が着いたのさ。親しみは有ったのだね。其れって合宿の親しみだったのさ。其れを変えて行くのが来年の3月までなんだよ。もっと早く悟ってたのが明神町の親方なんだ。外から見てたら早くから知ってたと思うのさ。放って置いたのが大人の生き方なんだ。僕が相談に行ったので、知恵を出して呉れてるのさ。其れに乗れるのがマリーなんだよ。娘たちは悟っては居ないのさ。新学期までの短い期間だけど、ハーバードを使えば何とか成るとは思ってるのさ。僕が出せるのはお金だけなんだ。だから千社札の3000万円を投資して見たのさ。空振りに成るかホームランに成るかはマリーの腕次第なのさ。僕は出来ると踏んでるんだ。