「 柳橋の店の玄関に立ってたお前を見たとたんに、出来る事なら傍に居て貰いたいと思ったのさ。畠山から養子として岩崎に連れて来られたのは丁度あの時のお前と同じくらいの齢だったな。正確には15歳の春だったのだ。其の二年後に大阪の豪商の娘が嫁入りして来たのだ。わしとは7つも違う勝気な女だったな。お床入りは隣の部屋に連れて来た女が耳を澄ましている部屋だったな。此の屋敷では無いぞ。伊勢ではかなり自堕落な暮らしをして居たので、女は知って居たのだ。ふすまを一枚開けて女に見られて居ただろう。見事に失敗して仕舞ったのさ。此んな話は聞きたくないだろう。」

    「 いーえ、珠樹は芸者を卒業しましたのよ。柳橋のお母さんに言われて居ましたの

        貴女一人に1万人もの女を囲う位の

        お金が掛かってるのよ。家に籍を置いて

        居た5人の芸者さんにもお一人ずつ1億

        って支度金を挙げて自由にしたのよ。

        岩崎様のご恩を忘れない様に

と言われてましたのよ。心得違いして居たのに気が着きましたの。何とかお返ししようとしてトレヴィにお誘いしましたの。芸者って貴男の女なんですもの。夜のお勤めもツトメの内と思ってましたのよ。シチリヤで珠樹の体が燃え始めてから抑えるのに必死でしたの。ロンダのポロホテルで気が着きましたのよ。終わった時の貴男のお顔って情けないのにね。聞いては居ましたのにまだ珠樹の此処が火照って居るのに女として此れで好いのでしょうかって、ご免なさい。楽しい興奮を珠樹だけが―――もうダメ、ご一緒に昇って欲しいのよ。何でもしますから珠樹と一緒に終わって欲しいのよ。もう芸者は止めて女として貴男と居たいのよ。」


    イヤナお話を聞くのもヤー様とのセックスの続きに仕様としましたのよ。皆様愛が有ればって仰いますけど、珠樹は必死に考えましたの。

        終わった後のヤー様のしょぼくれた

        お顔をドウすれば

とね。ポロホテルで遣って見ましたのよ。

        珠樹もご一緒に火照るのを忘れ様

って。女ってダメなのね。まだ彼が欲しくて何とか固く仕様と焦りましたのよ。やっと気が着きましたの。ファックだけが二人の喜びでは無いのにね。

    「 ご免なさい、一緒に居るだけで好いって気が着いたのよ。結婚なんかよりもっと大事な事が有るのではって。少しは判って来ましたのよ。セックスって二人の日常の夜の時間だって。全部の時間をドウスレバって考えたら、昔のお話を聞くのも珠樹の勤めなんですのね。いーえ、もっともっと愚痴を零して下されば、その分セックスで楽しんでも好いって。終わったら、おイヤでしょうけどキスが欲しいのよ。其れも世界一の男としてのキスなのよ。好いのよ、柳橋のお母さんに教わる訳には行かないでしょう。せめてスペインに居る内に、チャンとスペイン流のキスを覚えて来て欲しいのよ。まだ火照ってるのを消すのは止めたのよ。その代りにヤー様のお口を貪りたいのよ。内緒なんですが、お願い。10分とは言わず1時間でも2時間でも貴男の口が欲しい女に成りたいのよ。芸者珠樹は何処かに捨てて、岩崎珠樹でも何でも好いのよ。昼のお勤めは少しずつ何とか作りますけど、せめて夜だけは珠樹が火照るのを許して欲しいのよ。お返しは世界一のキスでね。チャンと覚えて来て欲しいのよ。」

        ダメな女なんですもの。彼を貪り尽くしたいのよ。もう夜が待ち遠しいの。珠樹の髪の毛に彼の匂いを付けたいのよ。彼も満足して再チャレンジして下さるのなら、後のお風呂ではシャンプーはし無い事に決めたのよ。だって皆んなを振り向かせたいのですもの。