今のマリーは除隊した28歳からの4年を引きずって居るのだよ。恵まれなかった23年をハーバードのトップで計画してたホワイトハウスに入る代わりに、ペンタゴンの特任大佐を押し付けられたのさ。黒人がまだアメリカ社会の富裕層として認められないからなのさ。だから芝浦軍港って脇職に填め込まれたって事だったのさ。26からの2年で性の楽しみを覚えたばかりに男に嵌っちゃったんだ。僕は珠樹と会って岩崎弥太郎って日本のトップの男を知ったんだ。好い所も知った半面で、65で現役を退いた男の悲哀も知ったんだ。其れが今の仕事に繋がってるんだよ。
「 オーストラリアで再会した時のマリーは、男の怖さを知らなかったのさ。アボリジニに騙されたのは教育機関と思えば好いのさ。日本に帰って来た時の僕は狂ってたんだ。来る日も来る日も、上野の松坂屋で女漁りをしてたんだ。其れが女を知る教育に成ったのさ。お互いに性と社会の教育には苦労したんだ。娘たちは此れから教育を受けるのさ。今僕たちに出来る事は、来る嵐にヘコタレ無い頑丈な心を作ると思えば好いのさ。娘たちはマリーを信頼して、マリーは娘たちの心が今までの嵐に耐えて来た強さを思って欲しいんだ。より強くするのに何を遣ったら好いかをね。」
「 其れが判らないから困ってるのよ。」
「 偉そうな事を言うのじゃ無いよ。幼稚園の10人って、知識も経験も少ないから皆んなに付いて行くしか考えないのさ。其れが十文字の3期生に成れば、知識の違いが出るのが当たり前なんだ。其れをマリーの知識と経験で思いがけない方向に10人を落とし込んじゃうのさ。たとえば突然の興味の世界を作れば、いやも応も無く付いて来るよ。突然思い掛け無い物って色々ある筈なんだ。旅行も其うだし食べ物だって有るでしょう。体の問題も有る筈なんだ。たとえば生理だって10人同じだとは限らないでしょう。あの子たちはビデも知らない筈なのさ。ピルくらいは知って居ても、ハーフピルを売ってるなんて知らないでしょう。マリーはピルカッターが有るのは知ってるでしょう。小さな事でもアノ子たちに取っては新鮮な興味に成る筈なのさ。便秘だって処理の仕方が様々な筈でしょう。10日も出ないで苦しんでる人には指で掘り出すしか無いのだよ。マリーも何度か経験してる筈でしょう。お風呂場で何時間も掛けて爪で砕いて出して挙げた事が有ったでしょう。僕との繋がりも其んな所にも有るのだよ。マリーに遣れとは言わないけど――――」
「 判ったわ。突然持ち出すのが効くのね。そうか、あの子たちの心ってまだ新鮮なのね。青臭いって言えば其れまでだけど、そこを利用しなさいって言うのね。うーん、新鮮なのに感心してたのじゃダメだって言うのね。そうか、母親に成るのって其んな遣り方も有るのね。マリーは娘たちを育てるのしか考えて無かったのよ。利用するのも必要だって事なのね。」
「 其うとも言えるのさ。多くの母親って幼稚園の娘の友達から母親同士が友達に成って行くのだよ。
其れをハハトモって言うらしいけど
同じハハトモでも娘たちに教わる
だけでは無く、娘たちを利用しようと
する中から母親も利用しようって
母娘の関係が育つのさ。父親は知らないけど、僕が聞いた中からはお互いに利用し合うのが長続きする極意らしいのさ。何も娘たちに甘えろなんてアホは言わないよ。利用しても好いってお互いを理解し合うのが自然に成ればブラスの関係が生まれる筈なのさ。あの子たちが知らない事って多い筈なんだ。突然も其の一つの条件なんだよ。10人で明日も晴れだって油断してる時に落とされた突風には仰天するのだよ。遣って見てよ。」
僕に言えるのは其れ位だったのさ。