穏やかな口調でマリーが話し出したんだ。
「 聞きたく無いのだったらマリーの胸の内に終っといても好いのよ。全部山田さんに聞いたのよ。あの子達とは二回りの開きが有るのよ。其れにもう3年近くは成るのよ。青森から続いてるって山田さんが話して呉れたのよ。あの子だって胸の思いを打ち明けたいって相手が要るのを知ってたのね。女の弱さとも言い切れないのよ。話して仕舞うとスッキリするのね。10人の心の支えをマリーと分けようって話だったのよ。」
迂闊と言えば其れまでだけど、10人の娘たちを僕一人では背負いきれないからマリーを呼んだのだったね。楠さんは何処まで行っても家政婦なんだ。破格のサラリーを支払う家政婦なんだから、娘たちの心の問題にタッチして貰っては困るのさ。じゃあ、頼れるのはマリーしか居なかったんだ。そりゃ随分ひどい事も言ったよ。来ると早々、娘たちをカナダに連れてったでしょう。
遣るのは好いけど10年早い
なんて悪態を着いたよ。
「 ご免、其れもずーと考えてたのさ。僕の周りにいろんな人が居たね。今までマリーの事を真剣に思わなかったんだ。違うんだよ。真剣に考えて居たけど、マリーだったら放って置いても逃げて行かないって甘えてたんだ。良く考えたらマリーを愛してるのに気が着いたんだ。」
笑って押し止められたのさ。
「 ありがとサン、マリーも一緒よ。今更愛だとか恋なんかいう馴染みじゃ無いのよね。マリーだって考えたのよ。もう腐れ縁だってね。やっと目が覚めたのよ。山田さんが功に思ってるのと似た思いなのよ。世の中には此れしか無いって男女も居るのにね。前世から赤い糸で結ばれて来たって言うけど、功って不思議な男なのよ。マリーにはお似合いの変な人だってね。其れで好いって思うのよ。大丈夫よ、山田さんとは3年の付き合いしか無いけど、功を介しての付き合いだと決めてるのよ。ストーカーを退治したって事なんでしょう。其れって長い一生のホンの何時間かのお話なのよ。山田さんにはチャンと教えて有るのよ。」
僅か17年の事なんでしょう。マリーは
34年のゴミとチリに塗れて居る
ってよ。
17年から34年まで想像してご覧なさい。
今を縮んで居たらとてもじゃ無いけど
生きてはいけない
ってよ。其れで好いんでしょう。功の23年が何よ。マリーに言わせたらまだお尻が青臭いのよ。山田さん言ってたわ。
噂には聞いてたけど、知らない間に痛い
のだけが残った
のですって。いーえ、ライバルにするのには10年早いのよって、言って挙げたのよ。功をチャンと扱えるのはマリーだけなのよ。さあお坊ちゃん、東海道の思い出を教えて挙げるわ。掛かって居らっしゃい。