ホテルに着いたのは深夜に成って居た。其れでもロビーは煌々と明かりが灯って、仲居さんが出迎えて居た。

    「 お待ちして居ました。お食事がまだかと思いましたので準備は出来て居ります。先ずはお寛ぎに成ってから食堂にご案内します。」

    マネージャーが田舎にも拘らず破格の出迎えだった。狭い地域なんだ。新型のスクールバスの連絡はしてるとは思って居たが、其れを言われたら急にお腹が鳴り始めたのさ。

    「 皆んなも倒れそうにお腹が空いてるでしょう。汗くさいのは嫌われるからひとっプロ浴びてからにしたらドウかな。」

    娘たちの汗を言ったのじゃ無いのさ。マリーを温泉に入れたかったんだ。僕も一緒に入るってのが効いたのさ。何年ぶりの混浴だったかな。食事が待ってるのが幸いして、大騒ぎに成る前にお風呂は何とか収まったよ。洗って遣りたかったマリーも芝浦を思い出したから急いで流してたよ。


    食堂と言っても大広間なんだ。畏まってる娘たちの前にビールが出てたのさ。マリーが注いで回ったんだ。仲居さんと顔を見合わせながらね。

    「 好いのよ、此の子達国際免許で運転して来たのよ。国際的にはもう大人なのよ。1本だけなら許して挙げましょう。」

    何がなにがなんだ。かなりな酒豪なのは知ってたけど、お酒が入ったら笑いが戻って来たのさ。仲居さんを巻き込んでの宴会が始まったんだ。そっとマネージャーに挨拶したよ。

    「 国際的な一団と認めて下さい。黒人のマリーが引率して居ますが、彼女はアメリカのハーバードの学士課程をトップで卒業した秀才なんです。此れからもお世話に成ると思いますので、此れはマリーからの心づけとして受け取って下さい。」

    分厚い万札を裸のままで差し出したのさ。


    一旦は辞退する様子を見せたので、

    「 此れはアメリカ流のチップです。明日に成れば銀行が開くと思いますので、支払いの方は僕が準備します。酒が入ると騒ぎ出すかも知れませんが、其処を大目に見て遣って頂きたい心づけです。明日の朝も少しずらしてお願い出来ますでしょうか。」

    正月明けとは言え、此処までくる観光客は居ないのを見越しての挨拶をしたのさ。

    「 ホテルとしましては助かりました。ざっくばらんに申しますと、暮れからの当ホテルは開店休業状態が続いて居たのです。全館をご提供しますのでご自由にお遊びに成っても構いません。従業員一同に代わりましてお礼を申して置きます。」

    ホッとしたのは事実だったのさ。何しろ黒人のマリーが居るだけでも難しい対応を迫られると思ってたんだ。ホテルとしてもまさか黒人が居るとは思って居なかった筈なのさ。破格のチップを受け取った裏には、黒人OKが見え隠れしてたのさ。


   ビールの提供は其れ成りのサービスを示して居た。娘たちも素早く察したのさ。黒人のマリーを心に懸けてたのは皆んな同じだったのさ。仲居さんがそれと無く話した様だった。実はビールには慣れて居たのさ。お互いに顔を見ながら追加して解放されたんだ。恐らくマリーも根津では許して居たと思うんだ。何人かは顔にも出ないのさ。仲居さんだって客がいなければ仕事は無かった筈なのさ。チップをドウコウ言う前に、僕の注ぐのもOKして娘たちに混ざって飲んだのさ。まあ適当にね。

    「 お願いできるかな。娘たちが心配ですから一緒に温泉に入って遣って呉れますかな。其れ成りの用意は此れで何とかホテルに了解を取って貰えますか。」

    田舎を見越した話にもチップが効いて小母さんたちのOKが取れたのさ。ドウ成ったのかは詳しくは教えないよ。僕もマリーも一緒になんて、云わなくても好いでしょう。