「 此れからは下りに成るんだ。車の運転って下りの方が難しいのさ。登りだとアクセルを放せば自然に停まるでしょう。下りはドンドン勢いが着くから自然にブレーキを踏んじゃうのさ。ブレーキを使い過ぎるとオイルに空気が混ざって効かなく成るのだよ。だから出来るだけエンジンブレーキを使ってブレーキぺタルを踏まない様にし無いと拙いのさ。交代で遣って見るかい。」

    三島までの下り道は絶好のテストコースなんだ。キャッキャと騒ぎながらでもエンジンブレーキを手の内に入れたんだ。17歳って一番敏感な年ごろなのさ。運動神経を均すのも早かったね。殆ど三島までには10人の訓練は終わったんだ。


        御前崎まで遣ってっても好いでしょう

ダメと言ったって遣るに決まってるでしょう。お昼も食べちゃったし、後はおトイレだけなのさ。マリーと二人で後ろで眠っちゃったのさ。三島からは地図を頼りに10人のドライブが続いてたよ。大騒ぎの声が子守唄に聞こえるから殆んど熟睡しちゃったんだ。止ったので目を覚ましたら山の中なんだ。暗く成り掛けてるって言うのに周りは森に囲まれてるのさ。

    「 道が違うでしょう。誰が地図を見てたのよ。」

と、云われても皆んなシュンとして答えが無いのさ。

    「 御前崎って灯台なんだよ。太平洋から離れたら判った筈なんだけどな。」

    言ったって仕方が無い問題なのさ。暗く成り始めたお正月なんだ。思わずマリーと吹き出しちゃったのさ。だって10人揃って泣き出したからなんだ。


    マリーがハンドルを持ったのさ。

    「 ドレドレ、地図を見せてご覧。ふーん山の中ってのは此の辺に居るのだね。Uターンして引き返そうよ。」

    マリーも心得てUターンしたのさ。

    「 ガソリンが限界近いのよ。持っても30キロくらいかしら。右手の空が明るいから町が有ると思うのよ。惰力走行を使うから皆で見て居てよ。」

    流石だと思ったよ。30キロは脅しの筈なんだ。娘たちの涙を救うのには、脅すよりも仕事を与えた方が厳しいのから離れる手を使ったのさ。山と言ってもなだらかな坂だから、惰力で走ると止まりそうになるのさ。ギヤ掛けしてエンジンを掛けるんだ。此れも勉強には成ったのさ。


    「 ほら、此れ位のスピードだったらサードのギヤでエンジンは掛かるのよ。誰か遣って見てよ。」

   停まりそうなスピードで運転を交代してギヤ掛けを教えるのさ。誰も居ない道だから動いて居るのに運転席を交代するのが面白いんだね。此れが笑顔を取り戻したんだ。チラホラ家が見えて来た。

        有ったはガソリンスタンドよ。

ホットしたよ。閉める寸前だったのさ。生き返った娘たちがおトイレに駆け込んだのさ。其れが汲み取り式のお便所でしょう。普段だったら我慢するトイレなんだが、騒ぎながら済ませたから息を吹き返したのさ。


    「 御前崎だと、此処からだと明日の朝に成っちゃうぞ。其れだったら三島に引き返した方が。」

    聞く訳が無いでしょう。電話を借りて交渉なんだ。何とか説き伏せて空けて置くのを確認して御前崎に向かったのさ。夜道を娘たちの運転でね。