マラガからの第二信が届きました。第一信とは様変わりした落ち着いた文面でした。ピカソ美術館の記載が紙面を埋めて居ましたので、弥太郎さん同伴の落ち着いた様子が見て取れました。中庭に設けられたカフェテリアでドイツビールを楽しんだと書いて有りましたが、美術館に中庭が作られて居るのでしょうか。日本では美術館でアルコールをサービスするなど考えられません。ピカソが其れを許すムードが有るのでしょうか。僕が頭の中で作って居るスペインとは大分違うようにも思えるのです。


    マラガ・ヒブラルファロの二日目に入りました。ヒブラルファロ城をそっくりホテルに作り替えたコジンマリトシタホテルですのよ。マラガでは別格のホテルだと聞いて居ます。スペイン支局が予約して下さったホテルなんですのよ。11世紀にアルカサバ防衛の為にイスラム教支配者が作って要塞だと教えられました。11世紀に既にイスラムが存在して、スペインを支配して居たとは信じられませんでしたの。スペインには古くて新しい発見が有りますのね。何れ落ち着いたらお城を詳しく探検したいとは思って居ますのよ。はるか目の下に地中海が望める素晴らしいお城ですのよ。


    とも、書いて有ったのです。余程気に入ったと申しますか、珠樹の性格から想像しますとマラガ・ヒブラルファロホテルに魅入られた思いを感じました。高輪の御殿は森の中にひっそりと佇む感じの屋敷でしたし、ビュイックでは度々皇居に乗り入れて居ましたので、格式ばった佇まいに圧倒される事は無い筈なのです。恐らく珠樹の思いよりも弥太郎さんが魅入られているのを言いたいのだと感じました。


    お部屋はツインでしたが小さいと感じる物でしたのよ。30ソコソコしかお部屋が無いホテルですから、確保するのも難しかったと思いますのよ。それと無く支局の皆様方がお泊りのホテルを尋ねましたら、お二人はマラガ郊外のホテルと仰って居ましたのよ。男性社員の方をお聞きするのは失礼だと感じましたので、其れ以上は伏せて置きましたの。特別待遇の中に上司としてのマラガの位置取りが垣間見られましたので、彼のご満悦のほども嬉しく感じました。

    とも書いて有りました。ローマ支局とは格段の待遇の違いが弥太郎さんの遣る気にも火を着けたと視て取れました。二日続けてピカソ美術館に向かうのも異例の事だと思いました。恐らく弥太郎さんの興奮に併せたのでは無いかと思ったのです。シチリヤとは違ってスペインは広い地域に分散して拠点が有るようです。其れが偏ったマラガに釘付けに成って居るのは弥太郎さんのお気に入りなのでしょう。彼にぶら下がってピカソに見入って居る珠樹の姿が見える様な文面でした。


    驚きましたのよ。3階建てのビルにピカソの作品だけでも240点も展示して有りましたの。無造作に展示して有りますが、中には日本の美術史にも載って居る作品が数十点は有りましたのよ。此れだけでも上野の国立美術館を総上げ出来る程だと思いましたの。最初の数点は彼が解説して下さいましたが、目を見張る展示にはお口が開いたままに成って仕舞いましたの。スペインの底の広さと言いますか、恐るべき文化に圧倒された1日でしたの。

    此の分では、暫らくはマラガから離れられないのではと感じました。