「 モロッコのセウタに着いた時はホントに死んで居ましたのよ。生き返ったのは彼の優しさだけでは有りませんでしたの。」
ジブラルタルからの手紙には、其の経緯が詳しく書いて有った。マルタで接待に当たったローマ支店のリーダーに聞かれたのだって。
モロッコにはローマ支店の力は
及ばないから、スペイン支局の
応援を求めても良いですか
だったのさ。珠樹の独断でOKしたらしいのさ。彼を現役の長とするのならって。スペイン支局に計画が有るのかって尋ねたらしいのだ。
サファリラリーに岩崎重工のクルーザ
ーを出す用意が有る
のを聞き出して、岩崎重工の当事者の同席が有るのならって認めたらしいのだよ。彼をオブザーバーとするのならお断りだってね。あくまでも現役のリーダーとするのなら認めても好いって約束したんだって。だからモロッコのセウダで出迎えたスペイン支局の人たちは凄かったって書いて有ったよ。現地採用の女性も多かったんだって。弥太郎さんはカンカンになってお怒りに為ったらしいのさ。それと無く雰囲気は珠樹の差し金がバレテタらしいのだね。ですから三日、寝たふりをして遣り過ごしたって書いて有ったよ。セウタは漁村なんで介抱できるホテルじゃ無かったんだって。スペイン支局の女性たちの献身的な介抱が有ったので、弥太郎さんのお怒りが静まったらしいのさ。
ベッドから降りられる様に成って
「 ドウも臭いな。珠樹が仕組んだのだろう。」
と、詰られたらしいのさ。
「 存じませんわ。スペインに岩崎商事のお店は有るのですか。」
って、聞いただけだって誤魔化したんだって。カンの良い彼は騙し切れないのは悟ったと書いて有った。それと無くサファリの砂漠に行って見たいってカマを掛けたんだって。連絡して岩崎重工の現地のやり手が来て交渉が始まったのだってさ。珠樹は弥太郎さんの秘書待遇で同席させて貰ったのさ。彼女らしいやり方なんだ。女の恍けを随所に使って弥太郎さんを現役に追い込んだのだよ。其んなのは一つも書いて無かったけど、聖心の3期から2年付き合って来れば珠樹の手口なんか判ってたんだ。僕はセックスを現役に戻せとは言ったけど、彼の生き甲斐の商事の現役に戻すのがモロッコの旅だったのさ。
判るんだ。失敗が許されないでしょう。必死の度合いは凄かったと思うよ。一旦は退職金を受け取っちゃったんだ。今更返す事も出来ないでしょう。珠樹の思惑は、セックスの封印解きに倣って心の中でウジウジしてた現役復帰をモロッコで遣ったのだね。とても手紙なんかの余裕は無かったのさ。弥太郎さん珠樹の大きさに改めて目を開いたとは思うよ。男としては巧い買い物をしたと思うんだ。まあ、ボロを纏って柳橋の玄関に訪れた鶴を見逃さなかった目利きには改めて敬服したよ。