もう腰が抜けましたのよ。

    「 歩けませんわ。此れではサルソ川には行けませんのよ。」

    1週間の彼ったら、鬼の様でしたのよ。失神して居る珠樹を水シャワーで生き返らせてバックでお責めに成るでしょう。珠樹は此れが堪りませんのに、ヤー様は平気なお顔で責め続けますのよ。女と男の感覚がこれ程違うとは知りませんでしたのよ。10回も行くのに彼ったら一度も行かないのですもの。スタミナの差は明らかで、さすがの珠樹もダウンして仕舞いましたのよ。

    「 良し、アルファロメオを取りに戻ろう。」

其う仰られましても歩けませんの。結局タクシーを呼びましてタオルミーナに戻りましたのよ。お家はかなり出来上がって居ましたので、キッチンのドアから入って大理石のテーブルに腰を下して仕舞いましたの。職人さんがお笑いに成ってるのにもお返事する元気も有りませんでしたの。彼がアルファロメオに担ぎ込んで呉れましたの。恥ずかしくて顔も上げられませんでした。


    「 パレルモに戻るぞ。巧い物を食って1週間休めば元に戻るだろう。」

    ただ眠って居るだけでしたの。彼がお優しいのは感じて居ますのに、お応えする気力も有りませんでしたの。ゆっくり海岸線を走って下さるのに、景色を見る余裕も無かったのです。パレルモの町に入ってアレッサンドラホテルに横付けしましたの。此処はご夫婦の経営ですから自由が効きますのよ。買い取りも考えましたが、其れよりも年間契約をして有りましたのでロビーでご挨拶を済ませましたの。彼が車酔いにして呉れましたので、お部屋まで抱いて行って呉れましたの。不思議ですのね。彼の息が顔に掛かったら元気が戻りましたのよ。


    「 お前にはパレルモが逢って居るのだな。」

お返事なんか出来ないでしょう。

    「 一晩休めば元に戻るさ。付き添ってるから心配するな。」

    珠樹を征服なさった弥太郎さんって、キン肉マンに見えましたのよ。ベッドで軽々と裸にされて熱いタオルで拭いて下さいましたの。涙が止まらない私をジッと抱きしめて下さったのです。


    部屋食には奥様が着いて下さいました。微笑まれたお顔にはマリヤ様の面影が見えましたのよ。片言のイタリアンで、ご自分の経験を話して下さいましたの。ヤッパリバックで落とされたご経験でしたのよ。彼が聞いて居ても全部お話して下さいました。お膳を下げる様に彼を追い出して、蒸しタオルで腰を揉んで下さったのです

        夫婦だったら一度は通る道

だと仰って、1時間も揉み解して下さったのです

        1週間でタオルミーナに戻れますのよ

と、全部ご存じのご様子でした。珠樹に気を使わせないご配慮が嬉しかったのです。もう彼からも、シチリヤからも離れられない気がしましたのよ。