「 僕の仕事を教えとくよ。」

    「 好いの、聞いたって私にはドウ仕様も無いのです物ね。」

    「 そうじゃあ無いのだよ。昨日も言った様に、注文して来るお大尽たちは商売として2000万円を預けて来るのだよ。ハッキリ言うと2000万円が利益を生むから株を買うのと同じ様に高額克つ安定した利息に投資してるのさ。10人は毎週の投資が安定した利息を生むから投資を続けて居るのだよ。此処までは判るでしょう。」

    「 そう言う事なのね。利息ってどれ位なの?」

    「 今の所2000万円を8レースに分けて投資を引き受けてるのさ。其の内7レースは外れるように仕組んでるんだ。特定の1レースを推奨馬券として公表してるのさ。利息は8倍から15倍の範囲の馬券を推奨してるんだ。安定を続けるのには此の仕組みが商売人に取っては安定した投資と成るのだよ。つまり8銘柄の株を買っても7銘柄は価値が無い株なんだ。推奨の1銘柄が8倍の配当になって帰って来たら、10パーセントの手数料を引くから其れがマイナスに成る仕組みなんだ。正確な倍率は予測するのは不可能なのさ。商売人の旦那衆にすれば、デメリットが有るからこそ投資の醍醐味が有るのだよ。判るかい。僕が狙ってるレースは、3回に一回はマイナスに成る様に組み込んでるのさ。此れが商売人で無ければマイナスを取り戻そうとして投資を増額して来るのさ。旦那衆はマイナスが出ても2000万円の投資は変えて来ないんだ。明らかに商売としての投資をしていると同時に、僕に投資する狙いも変えて来ないのさ。実はこれが怖いんだ。僕と商売上の駆け引きをして居るのさ。どちらが崩れるかとね。商売の鉄則でしょう。安定がどこまで続くか、其れとも切り上げ時は何処に有るのかがね。だから何が何でも安定を続けなければ成らないのさ。」


    「 其う言う事だったのね。仮に株と同じに考えたら、毎週8銘柄の中の1銘柄を推奨し続けるのは出来ないのよ。しかも倍率を安定し続けるのも不可能ね。」

    「 当然だね。だからこそ此の投資には商売上のうま味が有るのだよ。農林省主管の東京競馬だから此れが出来るのさ。しかも表だって調査に当たって居る仲間、つまり組織の人間は100人は居るのさ。全員調査の項目には責任を持って居るから、其れを突き合わせて総合判断すれば、土日の20レースの中から8レースを確定することが出来るのさ。さらに裏で働いている人間はかなりの数なんだ。競馬ってのはカスバのルーレットと同じで、人間が仕組むのだから必ず思惑が絡んで来るのさ。其れも克明に調査の対象に成ってるから、20レースの内の8レースの確率はかなり高いのだよ。其の中でも特定の1レースだけを推奨馬券―――推奨銘柄として居るのさ。」


    「 そうだったのね。私は又、お大尽のおバカさんが競馬場に行かなくても賭けに参加できるのを狙ってるとばかり思ってたのよ。賭けは胴元が儲かるに決まってるのですからね。其の胴元を功が遣ってるとばかり思ってたのよ。ですから功が怖いのは、大穴があいた時の支払いを心配してると思ってたのよ。其うじゃ無かったのね。競馬って賭けと確率の問題でしょう。功の銀行には、毎週2億円が振り込まれて居たのよ。到底賭けと確率で得られる金額では無かったのよ。そうか、功の調査組織に投資して居たのね。」

    「 まあ其うとも言えるね。少し違うんだよ。確かに組織の調査力を利用してたのは間違いないね。僕は組織とは違うやり方を使ってたのさ。ノミの組織はレースの数字の組み合わせを全部受けてるのさ。競馬場と同じ様に、どんな組み合わせでも受けるんだ。僕は投資の金額は受けるけど、其の中の1銘柄だけは公表するけど残りの7銘柄は印を着けない投資として金額だけを受けるのさ。言って見れば

        一つの商品だけは本物ですが

        残りの7商品は並べて有るだけで

        偽物です

って商売だったのさ。此れは商売人だからこそ納得のいく商品の陳列なんだ。最初から本物の1商品は決まって居るのだよ。只其れが8倍に成るか15倍に成るかの違いだけなんだ。僕の仕事を教えたのは、実はノミ行為とは異質な商取引の掛け合いなのさ。だから続くのは何時までとは言えないし、税務署の査察が入れば僕が集中的に攻撃されるのが見えてるから怖いのさ。」

    流石のマリーもため息を漏らしたのさ。