「 此処大好きよ。熱海って賑やかな温泉街だと思ってたのよ。此んな静かな温泉も有るのね。」
「 気に入って呉れたのは嬉しいぞ。既に珠樹の名義に変えて有る。儂が死んでも何時でも来れるぞ。」
「 あら、お亡くなりに成るのですって。其んなのイヤよ、って言いたいけど、今夜は殺して上げる。」
珠樹が真剣に成った顔は、又一味違う顔に成るのさ。此れまで何百回と無く見て来たので彼も悟ってるのさ。目じりがキッと上がって、其れに引っ張られる形で小さい唇の口唇が上がるのさ。彼は此の顔が好きだから、財産分与なんかを持ち出して真剣を呼び出すのさ。今日は少し違ったんだ。珠樹はヤル気に成ってたのさ。
何度もお腹が燃え始めたのは知ってるわ
5年前だとチョビットだけ饐えた匂いがしたのに、此処暫くは其の匂いもし無く成ったのさ。つい先日も、興奮は有ったのに匂いはし無かったの。ハンカチで受けて挙げようとしたのに、少しも汚れなかったのよ。功だったらおへそを叩いて栗の花の匂いがするのに、もう6年近くお預けなのよ。私、あの匂いを嗅ぐとお腹の此処の所が熱く成るのよ。せめて功だけには本物を知りたいと思ってたのに肩すかしでしょう。今夜は死ぬ気でヤッテ見るわ。
「 熱海でも、此処は来の宮に区分けされてる別荘地なんだ。お湯が好いのも儂の好みに会って居るが、谷川のせせらぎが何とも言えない風情が有るだろう。」
確かに煩い程の谷の流れが響いて居た。
此処だったら声を上げても聞かれないわ
お背中を流しながらタオルを何枚も敷いたのさ。
「 お願い、マッサージして見たいのよ。横に成って下さいな。」
「 此うかい、嬉しいな、腰を揉んで呉れるとはな。」
流石にうつぶせに横に成った。もう必死に近かった。背中に被さってキスの嵐を浴びせたのよ。
うっ
此処までは何度か経験が有ったの。腰が浮いたのが判ったので、思い切って手をお股に入れたのよ。燃える様な物に手が触れたの。片足を持ち上げて、
「 お願い、お腹を見せて。」
震える声で必死に頼んだのよ。彼は逆らわなかった。ゆっくり腹這いから反ったのよ。
「 目を瞑ってて下さいな。恥ずかしいけどヤッテ見たいの。」
構わずお顔にタオルを掛けたの。ホントの所は見られるのが恥ずかしかったのよ。まだ元気が無い坊やをお股に挟んで見たの。思いがけずに持ち上がって来たのよ。何も用意して無かったので、シャボンの泡を塗ったのよ。判らなかったのよ。
ヤッタ、出来たぞ
跳び上がる彼を必死で抑えたのよ。素敵だったわ。判ったのよ。あの時は何も感じなかったのに、今は彼を感じてるのよ。
「 お願い、動かないで。覚えて置きたいのよ。」
もう、死んでも好いと思った瞬間だったのよ。
ぐっすり寝て仕舞って、彼が居ないのに気が付いたの。お庭を見たら、谷にしゃがんで居る背中が見えたの。そっと出て、お背なに被さって見たの。ところが彼が立ち上がったのよ。
「 30年ブリだな、いや、もっとかな。背中に娘の暖かさを感じたのは。」
私も嬉しかったのよ。まさかと思ってたのに、彼のお背なは大きかったの。
「 嬉しい、歩けるかしら。」
「 なんの何の、まだ力が残ってたのだな。少し歩くぞ。掴まってろよ。」
広いとは言えないお庭を散歩したのよ。私も彼も半ベソを掻きながらね。朝ご飯は功に教わったのと同じにしたのよ。お膝に座り込んで、勿論前向きよ。
「 あーん、おみおつけが欲しいわ。」
「 そうか、味噌汁だな。何十年聞かなかったな。東京ではおみおつけが普通だったのさ。儂にも飲ませて呉れるかな。」
まさかと思って居らっしゃったのよ。お首に腕を巻いて口移しして見たの。むせて吐き出したわ。おみおつけがトンだ顔で笑い出したの。もう全部、私の人に為ったのよ。
其れからドウシタのですって。
ビックを持ち出して伊豆を下ったの。知らない土地って興奮するのね。半島の先っちょまで行って旅館を探したのよ。
「 ホテルはイヤよ。ご不浄の有る旅館を探してよ。」
精一杯の甘えに応えて下さったのよ。小さな旅館だったわ。お泊りは私たちだけだったのよ。大威張りで露天風呂を独占したの。
「 寝せないから覚悟してね。」
明け方まで頑張ったのよ。彼がよ。
「 此んなのって有るのかな。」
有るも無いも、85才なのよ。やっと出来ただけなのは彼だって知ってたのよ。でも不思議だったわ。私も離さないで頑張ったのよ。1時間も2時間も温めて居たら下さったのよ。覚えて居るのは3回だけよ。彼が云うのには
小さいのも入れると5回は出来た
のですって。二人は新発見のお交じり――――――教えて上げない。85才と23才が頑張ったのよ。