角甚のご主人の案内で神戸まで足を伸ばしたのさ。
「 デパートだったら京都にも有ります。土地の人たちは行きませんので、観光客のお土産屋だと思われたら好いでしょう。神戸でしたら東京よりも品物は揃って居ます。」
で、神戸の大丸デパートに行ったのさ。夫人は男装に大はしゃぎなんだ。
「 此れが遣りたかったのよ。中折れを被るのならカットし無ければ似合わないでしょう。」
「 其うじゃ無いのだよ。一見男に見せても、堂々と畠山操で乗り込むのさ。ご主人が聞いて呉れたんだけど、お布施の上限は数千万円なんだってさ。其んな死に金を捨てるのだったら、女と見破られて追い出された方がマトモなんだよ。」
「 あら、私を誰だとお思いなの。高野山の常識では、豪族の畠山でしょうが、私はレッキとした岩崎の当主なのよ。数千万円なんてはした金は捨てても惜しく無いのよ。高野山がドウ出るか、其れを見たいだけなのよ。」
と、1億をポンと出したのさ。勿論青山さんが来て手配したのさ。
「 思い出しますな。奥様が聖心小の時代をです。あのころのヤンチャは止まる所が無かったのです。ご承知の上でメチャを為さるので追いつくのに苦労しました。遣りましょう。高野山が相手なら、勝てなくてもチョボゝゝゝだったら私も気が晴れます。」
に成ったのさ。高野大学から手を回して、大學の寄付として受け取らせたのさ。
桜は桜で、胸のはだけるブラウスにミニで決めたのさ。
「 ブロンドを切るのはイヤよ。アップにするのなら妥協しても好いのよ。」
で、神戸のトップの店で
30才に化け指して
と成ったんだ。神戸と云ったって、桜のブロンドに勝つ外人は居なかったのさ。
なんて手触りなの、此れこそ娘のおぐしよ
夫人は夫人で、
「 あら、此れが神戸流ってなのね。出来なければ青山のアクアを呼びますのよ。」
と、裏からはっぱを掛けるのさ。宝塚ご指名の店なんだ。化けるのなんて何時もの手管を使うから、アッて間に30才の女医に化けちゃったのさ。青山さんがドクターバッグを手配して呉れたんだ。
「 一応全部揃ってます。開けてはダメですよ。一度開けたら手を出さ無いと治まらなく成ります。フランス大使館で使って居る正規の鞄です。見る人が見れば、フランス大使館の医者だと思うでしょう。」
まで化けたんだ。夫人は大はしゃぎだから、止めないと桜のセットなんかメチャメチャにされそうなんだ。
「 高野山には10日掛けてゆっくり回ると仕様よ。すると毎日、此処に来て化け直さなければに成るでしょう。行った次の日は六甲に泊まろうよ。二日目はお化粧の予備日として、三日の回転でワンクールと仕様よ。」
に成ったのさ。其の通りに行く筈が無いでしょう。止めの利かない夫人と、夫人と同い年に化けた桜なんだ。もうはしゃぎ捲って、
「 此処から跡見に通います。」
なんて言い出したから堪らない。夫人も調子に乗って
「 好いわ、跡見を此処に持って来ましょう。」
には、角甚のご亭主も開いた口が治まらないのさ。