最もネアンデルタールに近いのは日本人か。
免疫システムに残る人類の歴史,
出典 The American Journal of Human Genetics
とうとう今年も花粉症の「季節」がはじまった。2月にはいると首都圏でもスギ花粉が観測されはじめ、ドラッグストアでは対策商品の陳列に余念がない。
花粉症を含めたアレルギーは、もともと体に侵入した細菌やウィルスなどから体を守る免疫システムが過剰に反応しておこる。
花粉症も大変だが、生物が生きていくには欠かせないシステムである。
この免疫に関わるいくつかの遺伝子はネアンデルタール人とデニソワ人からの「プレゼント」だったと今年の1月に明らかになった遺伝学の科学誌
「The American Journal of Human Genetics」
で独の研究チームが発表した。
人類の進化でエポックメイキングな最近の発見といえば、ヒトが絶滅させたと考えられている ネアンデルタール人と人間が交配していたことと第3の人類デニソワ人の発見である。
この3種は50万年前に共通祖先から分かれたと考えられ、ネアンデルタール人は ヒトより数十万年前にアフリカを出て主にヨーロッパに広がった。
ネアンデルタール人をヒトが滅ばして、人類の中でヒトだけが今の繁栄を築いたといわれている。
独・マックスプランク研究所のJanet Kelsoのチームは現代人の遺伝子の中に、ネンデルタール人やデニソワ人との交配によって残り続けている「彼ら」の遺伝子をさがしていた。
目をつけたのがTLRの遺伝子。これまでの研究データもとにピックアップした。TLR(Toll Like Receptor)は
細胞の表面にニョキニョキと生えているタンパク質である。免疫で非常に重要な役割を果たす。
体を外敵から守るには、まず外敵の侵入を関知しなくてはならない。この防犯センサーの役割を担うのがTLRというタンパク質なのだ。体内に侵入した細菌や菌類、寄生虫の一部がこのTLRにくっつくとセンサーが作動し、外敵をやっつける細胞が集まったりと、さまざまな免疫システムが動く仕組みである。
複数あるTLRのうちTLR1とTLR6、TLR10は染色体上に隣接している。ネンデルタール人やデニソワ人の3つのTLRを含む領域を現代人と比較する。
ヨーロッパ人と東アジア人、アフリカ人など現代人の14集団のこの領域を調べると7つのタイプに分類された。このうち2つがネンデルタール人由来、ひとつがデニソワ人由来だと判明する。
理論的にはヒトより数十万年先にアフリカを出て、中東を経由してヨーロッパに広がったネアンデルタール人の遺伝子は、アフリカに残った祖先由来のアフリカ人には存在しない。
調べると、確かにアフリカ人にはネンデルタール人由来のTLRを含む領域がほとんどみられなかった。
このように、現代人のTLRを含む領域のゲノム配列を詳細に調べ比較してネンデルタール人とデニソワ人由来だと突き止めた。
そして、機能が非常に重要性なので、数万年という自然選択を受けてもほとんど変わらずに高頻度で残っていたと考えた。
実はこのネアンデルタール人由来のTLR1とTLR6、TLR10遺伝子を最も多く持つのが日本人であることを突き止めた。それはどの集団よりも高く、約51%が持っていたのである。
Are Japanese people closest to Neanderthal?
Human history in the immune system,
Source: The American Journal of Human Genetics