本日七月四日、政府は日朝合意に基づく対北朝鮮制裁を一部解除する。それに際し、拉致議連は役員会を開き、この度交渉に当たった伊原純一外務省アジア大洋州局長から交渉の内容を聴取した。
 そして、失望した。以下、思ったことを列挙する。

 第一に、外務省の目的は、平和外交即ち日朝国交樹立である。従って、外務省にとっては、拉致被害者救出は、国交樹立の「障害」という位置づけである。
 そこで、何が起こるか。
 それは外務省の北朝鮮と宥和しよう宥和しようとする対応になって現れてくる。
 
 外務省は十一年前の小泉訪朝の時、北朝鮮の出してきた五名生存八名死亡という嘘の表明を信じて、国内の家族に、北朝鮮に言われた通りに、「死亡宣告」を行って拉致問題を終結させようとした。
 この度もその体質は同じである。
 北京での交渉で北朝鮮が読み上げた「調査委員会」の構成と人員を、疑うことなく一生懸命にメモして持ち帰り我々にそのメモを配った。
 読み上げられたメモであるから、委員長や責任者の名前は、全てカタカナで表記しており漢字ではない。極端に言えば、実在する人物かどうかも分からない。

 外務省はこのメモを持ち帰り官邸で総理に説明して本日の制裁解除に至るのであるが、この無邪気さ、無防備さ、無責任さは、十一年前の「死亡宣告」を信じて帰ってきたときと変わらない。

 議連から、北朝鮮から中途半端な調査結果しか出てこないならば、制裁を元に戻すか、さらにきつくするということだな、と念を押しても、外務省の目的は相手の感情を害しない宥和であるから、局長は、制裁を元に戻すことがあり得るとは一切言わなかった。
 これでは、相手は、いつものように安心して嘘をついてくるではないか。

 次に、外務省は、この特別調査委員会が北朝鮮の最高指導機関である国防委員会から特別な権限を与えられていること、つまり、国防委員会の直轄調査会であるから「評価できる」と説明する。
 そうであろうか。反対ではないか。
 これでは、国防委員会委員長つまり首領様の意に反する調査結果は出せないということではないか。
 その首領様の親父の首領様は、拉致問題は「五人生存、八名死亡」で解決したと言っていたのである。
 つまり、国防委員会直轄、これは、評価して制裁を解除する理由にならない。

 以上、要するに、制裁の解除は、北朝鮮が拉致被害者を出してきたのを現に見てからであり、北朝鮮から特別調査委委員会の概要を読み上げられて、それをメモして持って帰った現段階では、
 制裁解除の理由は見いだせない。

 外務省では駄目だ。
 国家主権の回復、犯罪捜査の、観点から対北朝鮮交渉を組み立て直さなければ駄目だ。
 犯罪捜査の観点に立てば、犯人に「自分のしたことを特別委員会を造って調査します」と言われれば、どうするか。犯人の誠意を評価して、自宅にお帰り頂くのか。これは、あり得ない。「馬鹿野郎、つべこべ言うな、早く被害者を出さなければ、さらに拘留を続けるぞ」と対応する。

 以上、先ほどの局長の説明に関して、思ったことを書き留めた次第だ。
 
 今こそ、全国民的関心が拉致被害者・同胞救出に高まり、全日本国民が、腹の底から怒っているぞということを北朝鮮に分からせなければならないもっとも大事な局面に達した時だ!


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