ひと月ほど前だったか…
夫に「なんで庭で練習せんのか分からん!?」と言われた。

4年前に、愛犬レイを迎えるにあたって
家庭菜園から芝生に変えた。
しつけ教室での競技会やドッグダンスの練習をするには十分の広さがある。
なぜ、その練習に庭を活用しないのか、その場を提供してやっているのに!と奴は言う。

している。
練習している。
見られないようにコソコソ練習している。

奴が知らないだけだ。




犬たちとのドッグダンスは、私の魂の喜びであり、その表現のひとつだ。
私はその喜びの表現を奴に見られたくないのだ。


なぜなら

ダメ出しされるから。
喜びの表現を否定されるのなんて
まっぴらごめんだ!





半年前から、レイとのドッグダンスをもっと映えるものにするために、私自身もダンスを習い始めた。

生まれてこのかた、ダンスというものをしたことがなく、体育も音楽も成績が悪かった私だ。
まともに体が動くはずがない。
そのみっともなさたるや、鏡に映る変な動きをしている自分を見て、時々吐き気がするほどだ。


私が、それで心を打ち砕かれていることなど露ほども配慮しない奴は、容赦なく批評を述べてくるだろう。
そんなの嫌に決まってる!



しかし、ドッグダンスを極める!と決めた私は、その壁を乗り越えた!

奴の前でレイとダンスをしたのだ。
通し稽古する様を、奴にカメラで撮影してもらった。
しか〜し、批評しろとは言っておらぬ!


なのに、奴は言ったね。
そう、やっぱり…言ったね。


「お前の動きが小さい。だから、レイがどうしていいのか分からん。もっと遠くに離れたりして全体的に大きく動かんといかん。」


ほっんとにあんたって…
痛いとこ付いてくるよね!
ほっんとにデリカシーないわ―!
だから、見せたくないんよぉ!


と、心の声は叫んでいたが、そこは壁を乗り越えたわたくしだ。
受け入れた。

その忠告、しかと受け止めた!




ダンスの先生に、この動画と夫のコメントをシェアして頂いた。

先生曰く
「旦那さん、なんかしてましたぁ~⁉絶対になんかしてたでしょ!すごく的確なアドバイス!」


この日のレッスンでは、《大きく動く》がテーマとなり、今の2倍大きく動くように練習した。
そして、先生から「とても大きく動けるようになったけど、ダンスの世界では、これでようやく普通。舞台で遠くの人にも感動を与えるにはこれの倍大きくしないといけない。」とアドバイスを頂いた。

後で、このレッスン動画を見て愕然。

一生懸命大きく動いていたつもりなのに、ほんとに普通の動き…


ダサい…
なんてダサいダンスなんだ…



でも、諦めない!
ドッグダンス界のスターになるんだ!
(誰?)


失礼。
変な茶番になった。



夫は、名プロデューサーなんだと、ようやく受け入れられた出来事だった。
芸能界にもご主人がプロデューサーの御夫婦が多い。

こういうことなんだな。
その人を側で一番見ていて、その輝かせ方も一番知っている。
それが、名プロデューサー。

なにも、ケチをつけようとしていたわけではなく、相手の夢を応援しているからこそ出てくる、厳しい評価。

どうでもいいと思っているのなら、すごいすごい…と言っておけばいい。
そうすれば妻はご機嫌で満足するだろう。

そこに敢えて一石を投じるエネルギー。
これぞ、愛。


私の魂の喜びを表現するための
素晴らしい相手役がいる。
レッスンしてくださる先生方もいる。
一緒に稽古する仲間たちもいる。
披露する場もある。
そして、名プロデューサーも見つかった。

舞台は整った。

いざ、出陣!
ブヲォヲォ〜ン
ブヲォヲォ〜ン(ホラ貝の音のつもり)