(このブログの内容は個人的な見解に基づくものであり、所属組織とは一切関係ありません。)

 

 安倍総理は2月27日、全国の小学校、中学校、高校、特別支援学校に対し、2日から春休みまで学校休業を行うことを要請しました。日本では、約10年前に流行した新型インフルエンザ(A/H1N1)(以下単に「新型インフルエンザ」(※))の対応としても、学校休業が行われています。また、諸外国においても同様に学校休業が行われているところも少なくありません。

過去の対応、海外の状況についてまとめました。

※新型インフルエンザは2009年4月23日に米国内の人への感染事例が報告された感染症。5日後の4月28日には人から人への持続的な感染の発生がWHOにより宣言され、またその2日後の30日には世界的な流行フェーズに入ったことが宣言されています。

 

〇新型インフルエンザに関する対応

日本で、国内初の新型インフルエンザ患者の発生が確認されたのは2009年5月16日。

同日に、患者が発生した兵庫・大阪の全域で学校休業が要請されています。


後日行われた「新型インフルエンザ対策総括会議」の会議資料では、特定の学校や学級閉鎖にとどまらず、兵庫・大阪の全域で休業を要請した背景について

発生患者が部活動を通した交流や移動範囲が広域である学生で、地域の主たる感染源になりうること
感染経路・感染拡大の程度が特定できなかったこと
と説明しています。

 

また、同会議の総括報告書では、我が国の死亡率は他の国と比較して低い水準にとどまった(※)と評価し、その要因については、現時点では未解明であるとしつつも、広範な学校閉鎖がその要因の一つであると指摘されていました。

※同会議の資料によると、新型インフルエンザの死者数は、日本が199人である一方、アメリカ12000人、フランス312人、韓国257人等。各国の死亡者数の定義や集計日は各国で異なるものの、人口比の死亡率も各国と比較して相当程度低かったことが読み取れる。

 

〇海外における学級閉鎖の状況

学校閉鎖は日本だけでなく多くの国で現在行われています。

UNESCOによると、3月6日時点で27の国において、一時的又は無期限の学校閉鎖が行われており、14の国(中国、韓国、モンゴル、イタリア、北朝鮮等)では全国的な学校閉鎖、13の国では地域的な学校閉鎖が行われています。


なお、2009年9月にはWHOが学校閉鎖に言及しており、
‐その可否は複雑で状況により大きく異なるため、WHOとしては推奨も反対もしない。
‐感染ピークを抑えることによる医療負荷軽減やワクチン等の準備期間確保の効果が期待できるが、流行早期に行う必要がある。
社会的経済的コストとの比較考量学級閉鎖による医療提供体制への悪影響こどもの保健や福祉の確保という観点も考慮が必要
としています。

(※2009年以降にWHOが学校閉鎖についての見解を変えたかどうかは未確認)

 


(参考)新型インフルエンザ(AH1N1)(2009年~)の状況の変化
2009年4月23日 米国内でのA型インフルエンザのヒト感染事例を厚労省内の会議体で共有
4月28日 WHOがフェーズ4(人から人への持続的な感染の発生、地域レベルでの流行)を宣言
4月30日 WHOがフェーズ5(ヒトから人への感染が2か国以上で発生)を宣言

5月9日 アメリカから成田に到着(8日着)した3名について感染を確認

5月16日 兵庫・大阪で国内初の新型インフルエンザ患者の発生を確認(国内初の患者確認)

       兵庫・大阪の全域で学校休業が要請

6月12日 WHOがフェーズ6(世界的な流行の進行)を宣言